平成22年10月7日更新
3EA1クラス
第3・4回:平成22年10月7日 学習内容/授業の運営方法/学習課題(予習、復習)/課題の解答/今日の一言
(続き)
・直面する可能性のある倫理的問題に関する具体例
・グループ討議と討議結果に対するコメント
・E-learningやグループ討議の事例分析課題(ソーラーブラインド、ギルベイン・ゴールド)に関する解説
・セブン・ステップ・ガイドの概説
・本学の教育目的と大学の質保証問題
・「倫理」とは何か(用語解説)
・倫理と法
・「科学技術」、「技術者」とは何か
・「科学技術者倫理」とは何か、その特殊性
・PCを用いた講義
・グループ討議
・討議結果の発表
・グループ討議の結果に関するレスポンスシートの作成など
・提出:課題1
・予習:パンフレット「アカデミック・インテグリティ」の精読(60分)
・予習:テキスト『技術者倫理』の第2章および第3章の精読(120分)
・復習:第1〜4回で学んだことについての考察の深化(120分)
課題の解答(表現はできるだけ原文のママです。[ ]内は西村の補足ないしはコメントです)
Q.仮想事例「百万石F1グランプリ」を読んで、貴方/貴女個人としてはレースを開催すべきだと思いますか?
A.(講義の中でご説明しましたので、原則としてコメントは控えます)
1.開催するべき 32名(42.1%)
2.開催するべきではない 43名(56.6%)
3.無回答 1名( 1.3 %)
1.開催するべき
・「レース開催の信頼性」[≒「お客や関係者のレース開催への期待」]を重視した。
・2週目だと考えると、今回の延期はF1グランプリ今後のF1グランプリ自体がうまく進まなくなる[=当地での開催が危ぶまれる]。多額の賠償金[を支払う必要がある]。
・2度も中止する訳にはいかないから。
・あまり長く待たせすぎるのは観客やスポンサーに申し訳ない。
・ここまできて中止できない。天候が回復するかもしれないので。
・セーフティーカーに頼る。
・ただし時間[=レースの開始時刻]を遅くらす。開催というみんなの期待があるから。
・チームから中止の声がないかぎりやるべき。サーキットの路面は排水性の良い設計になっているはずなので氷をとかすなどの対策は可能。
・とりあえずやってみないとわからない。
・やめた時のそんがい[損害]やバッシングを考えて。
・レース開始までの[気温や凍結などの]条件による。
・レース開始時間を遅らせることで、今よりコンディションがよくなる[のである程度安全に開催できる]と思う。
・安全管理をきちんと行えば、大会を開催できるので、これ以上まわりの人に迷惑をかける必要はないと思うから。
・何のためのGPかを考えたら「行う」以外ありえない。リタイアするかしないかはチームが決めることである。気温ぐらいでかいさい[開催]がゆらぐGPは技術的に面白くないし、意味がない。 [前半は、なるほど]
・開催によって考えられるリスクと中止によって考えられる損害を比べた。
・開催の準備がされているし、レーサーもプロなのでスピンしやすいことも考えて運転するから。
・開催時間までに路面の水はけ作業などの安全確保。開催時間までに気温が10度にならなければ開催時間を遅らせる。参加チームの意見を参考に。 [最後の部分については、次回触れましょう]
・希望者が多いため、(副委員長の発言より)事故が発生すれば、次回からはこのような状況で希望者も減少する([事故が発生して]痛い目みないとわからない)と考えた。ただ、私[=金沢実行委員長]の責任は避けられない。
・気温が上昇する見込みがあるから。
・気温の上昇が見込まれるため、この時点では開催する方向をとる。
・次回の開催。ファンや地域の活せい[=活性化]、信用、お金、安全性[など全体のバランスを考えて判断すること]が大事だから。
・前回が延期になっていること。また、開催しない場合の対策を正しく行うことができるのか(前日の事例があいまいであった為)。→賠償問題に発展
・前回延期しているため。
・二度目の中止には理由が弱い。
・発想[正しくは「発走」]時刻を遅らせて路面を融解すればOK。
・路面は良くなるかもしれない、多くの人が開さいをきたいしている。2.開催するべきではない
・イベントの主旨を変えれば良いと思うので。(例)薄氷のない直線を使った0-400レースなど。(例)実際にチーム(F1)が入っているレース場内に入ることはなかなかできないので内に入れる(見学できる)イベントに変えるなど・・・。 [大変高く評価できる部分があると思います。これについては、次回。その反面、レースを楽しみにしたファンを納得させるのは難しいと思います。どう工夫しましょう]
・けが人がでたときの責任が大きいので。
・しない
・スリップ事故による死傷者が出る可能性が大きいのでドライバーの安全面を考えて中止という判断しました。
・タイヤの安全が保障されていない条件下でレースを行い、大事故が起これば、責任が問われる。
・タイヤの安全性の保障がされていないから。
・タイヤの温度が上がらず、氷上等でスリップする可能性が高い。
・テレビ局などの立場も分かるが、安全が第一なので。
・ドライバーの安全が1番だから。
・レースには競り合いによって生まれるレーシングアクシデントは常に起こりうる。問題なのはドライバーですらコントロールが難しいコンディションで決行を下してしまうこと。レーシングアクシデントは運営側ではどうしようもないが、事故を誘発する環境で決行を決断するのはドライバーに死ねと言っているようなもの、ドライバーが100%実力を発揮できる環境が整ったうえでのレースというショーが楽しめる。 [大変興味深い意見です。これについては、次回]
・レースに参加するドライバーやクルーの安全が最優先されるから。
・レースの安全確保が確実ではない。
・レースをしたとしても[凍結などこの悪条件下では]レースにならないのでは? [確かに]
・安全が1番だと考えるから。開催するなら安全を確認できてから。
・安全な状況でレースを行うべきだと思うから。
・安全を1番に考えると開催しない方が良い。
・安全性の理由で。
・開催しないと、TV局や観客などに迷惑がかかるだろうが、ドライバーの安全を保障できない以上、開催すべきでない。
・外気温度や路面状態などの条件が悪いので中止する。
・観客やその他の関係者に迷惑をかけざるを得ないが、その圧力に負けて開催し、大事故が起きてドライバーや観客が死んだら取り返しがつかないから。 [観客の安全を考慮している点は評価できますよね]
・危険なので。
・技術担当の話より通常よりも事故の可能性が高く、レーサーの命に危険がおよびやすいから。
・技術担当顧問が安全を保障できないと言ったのでやるべきではないと思う。
・抗議や混乱は予想されるが、事故が起こった場合のことを考えると中止するべきである。
・事故があった時の責任は取れないから。
・事故が起こった時に責任を問われるのが嫌だから。
・事故が起こって最悪の事態におちいるかもしれない。また、2次被害の危険性。
・事故が起こる方がマズイ→次の開催の障害に→次の開催がなければファンは今回以上に落胆。 [目先の損得ではなく、長い目で見て信用と利益を上げよう、ということですね。興味深い回答です]
・事故が発生した時、責任が問われるのは実行委員長であるから。
・事故の恐れがあるため。
・人の命が最優先である。
・人命が最も大切だから。
・人命はすべてに優先される。
・選手の安全が確保されていないため。
・選手達の安全が第一だと思う。一度大事故を起こすと信用を失って今後レースができなくなる。
・大会の準備はもう進められている。路面の水は対応できると思う。時間を遅らせてでも開催する。 [こちらは条件付きの開催ですね]
・判断結果によって予想される責任の大きさが桁違いであるため。
・氷結している路上で事故が起き、レーサーがけがや最悪死んでしまった場合の後処理の方が大変になるから。 [こちらの方も「長期的に考えなさい」という指摘ですね]
・弁当やチケット代は金で払い戻しがきく。クレームは自分の責任になるしとり返しがつく。スリップで死人が出たら取り返しがつかない。
・万が一の際、マスコミ等にたたかれ次回の会場が金沢でなくなる事を回避するため。 [確かに]
・無理に開催して事故が起こったら先週のクレームや未売分補償では済まない責任問題となる。
・利益や客の気持ちも大事だが、人命はどうやっても取り戻せないものであるため。
・路面が非常に滑りやすく、事故が起きる可能性が高いため。
今日の一言(表現はできるだけ原文のママです。[ ]内は西村の補足ないしはコメントです) ※本日全数掲載
・「多人数の討議を行うと中間的な意見にシフトする」、なるほど! 突っ込みどころが満載な事仮想事例なのは、多くの面からアイディアを出してもらうためなのかなあと感じた。しかし、こういう学科なのでF1オタクが多いのは事実。私もそうですし。だからこそ、倫理的な問題よりも現実的な問題に目がいってしまう。「こんな場面起こりそうだなぁ。けど、どうしよう・・・。」となやんでしまうような事例が倫理的な問題を考えるのにふさわしいと考える。この仮想事例はあまりにありえないし、出来がひどい。「レースのことはくわしくないから」とおっしゃっていたが、講義の題材として挙げているなら、もう少し勉強してはいかがですか? [いや、まったくその通りなのですが......ご説明したように、これは次回取り上げる「チャレンジャー号事故」そのものなのですね]
・F1は金沢ですべきでない、ムリ。
・F1をやる時期がおかしいと思う。 [以上、設定に関してはご容赦を!!]
・NASA (お金)_(人[命]) [原文は「お金」と「人[命]」が天秤にかけられている図入りです。この件に関しては次回]
・いろいろな意見を聞くことができておもしろかった。 [確かにそんな様子でしたね]
・グル―プ長をやりました。 [で、うまくいきましたか? グループ間で、進め方にずいぶん差がありましたが]
・グループ討議が大変たのしかった。 [皆さんよくやったと思いますよ。それと他の方(↓)も関連することを述べていらっしゃいますが、金沢工大生のグループ活動能力は高いと思いますよ]
・この大学は、グループ討議や発表が本当に好きですね。 [こういう勉強の仕方を広く「アクティブ・ラーニング」と言います。知らず知らずのうちに実力がつく学習方法です]
・さまざまな感え方があるなと思った。 [そうでしたね]
・テスト走行という案は出なかった。非常にいい案やと思いました。 [そうでしたね。ところで貴方は関西のご出身ですか?]
・ドイツビールおいしいですよね! 夏休み中にドイツへ行ってオクトーバーフェストへ行ってきました。うらやましいでしょう! ハハハ [ドイツのビールは、たとえ缶ビールでも美味しいです(ホント)。そしてセンセイは残念ながら、うらやましいです(涙)]
・とても充実した話し合いができました。 [時間など、条件は悪かったのですが、皆さんよく頑張ったと思います]
・どんなに寝ても眠い・・・。 [まだ夏休みの疲れが残っているとか......。寝過ぎはかえって眠くなりますよ]
・むずかしい問題だが、考えていて大変たのしい。 [そうですね。そしてこれは、最後に披瀝したように、実話を踏まえているんですね。次回、一緒に考えましょう]
・もっと討論に時間が欲しかった。 [すみません。担当している4クラスの中では先頭のクラスなので、時間配分をちょっと間違えました]
・やっぱり意見をまとめるのは難しい。 [そりゃそうです。でもその甲斐あって、発表してみれば結構いい線いってたでしょ?]
・レースの実行、中止の決定をきめるのはとても大変であった。 [こちらもその通りですね]
・レース開催の人命と損失の問題が難しかったです。TV局のことを考えると1時間程度が延期の限界でしょうか。 [前半も後半もその通りだと思います]
・安全や金銭面などを同時に考えると、条件設定が厳しい。 [そしてこちらも、その通りでしたね。設定に関しては、そもそもこのネタ自体が架空の話だし]
・意外に討論が盛り上がった。 [そうでしたね。段取りのない議論──次回以降は手順を指示します──だったので最初はどうなるかと思ったのですが、いやぁ、盛り上がりの凄いこと]
・意欲を持って取り組めた。 [皆さん自身のやる気のせいですよ。自信を持ちましょう]
・移動時間がみじかかった。 [「前の教室からの」という意味でしょうか]
・雨が降らなくても、氷がはらなくても、モータースポーツとは危険を孕むもの・・・。ドライバーには愚行権があるが、開催側や技術者にはそれを認められるの? [「愚行(ぐこう)権」など、大変レベルの高いコメントですね。この件に関しては、次回]
・楽しかったです。 [ありがとうございます]
・議論が楽しくできてよかった。 [こちらも。なお、「楽しく議論できた」のは、(センセイではなく)皆さんがそうしたんですよ。気づいてました?]
・今回、金か命と議論して、ほとんどの人が「命」だった。ぜつめつ動物とかいる中、ヒトはどれほどの価値があるの? [正直、難しいところです。いわゆる「エコ」や「環境」の問題もそんなに簡単ではありません。この件に関しては、後日]
・今回の発表結果を聞いて本当にその場に立ち合ってしまうと意見と行動が変わる人がいると思った。 [面白いコメントなのですが、どこ/誰を指しているのでしょう?]
・賛否両論ですが、先生の雑談 → 授業 この流れがGood!! [人生、一度きりです。この講義も(16週ありますが)、基本的には一期一会です]
・私はやっぱりお金が一番大切です。 [気持ちはよくわかる]
・自分とちがう意見の人と話をするのは楽しかったです。 [それは凄いことですよ。「人の話をちゃんと聴くことができる」って、ものすごい才能なんですよ。オトナを見てご覧なさい。それができている人がどれだけいますか? 話し合っているように見えて、実は(お互いに)人形に一方的に語りかけているだけ、というケースがとても多いんです]
・実際にこのようなことが起こったら、おそらく開催されるでしょうね。 [状況にもよりますが、責任を誰かにかぶせて──あるいは誰も責任を取らずに──と、イメージしちゃいますよね]
・色々な考えがあるなと思った。 [一人では絶対に気づかない部分がありますよね。それに全体で発表するとさらに「そういえば」という視点も]
・人それぞれ意見が異なることを改めて知った。 [そうでしたね]
・石川県にてF1グランプリを開催するのは不可能である。 [気持ちはわかる。でも新潟県にも「日本海間瀬(まぜ)サーキット」というのがあります。もちろんF1ではありませんが]
・前で発表するときに心拍数がとても上がった。 [多くの方がそんな感じでした。でも決して不自然ではなかったですよ。よく頑張りました]
・多くの意見を聞く事により、新しい考えがでてきた。 [そうなんですよね。視界が広がる感じですよね]
・短い時間でグループの意見をまとめるのが難しかった。 [そりゃそうですよ。もともとは半々に分かれてたんだから。でも発表の段階まで来た時は、結構それなり、という感じでしたよね]
・短い時間の中で、多くの良い意見が出て良かったと思います。 [時間──時間配分を間違えました。ゴメンなさい──などの悪条件下、皆さんよく頑張ったと思いますよ]
・中止になっても、選手との握手会や車の展示会をするという予備の案には気付かなかった。 [最後の発表、とても高く評価できる部分がありますよね。でもそれでお客さんが納得するかどうかというと、やはり難しい部分があります]
・特になし [はい]
・難しい題材だった。 [その通り。実は意外と奥が深いんですね]
・日本の政治屋が外国には弱腰のはなぜ? [オトナになると、意外と弱腰になります。つい先日、NHKのBSハイビジョンで映画「荒野の七人」を放送していたのでちょっとだけ観たのですが、子供たちが「大人(特に親)は臆病(おくびょう)」という意味の主張をしていました。それに対して七人の一人(俳優はチャールズ・ブロンソン)が、そうではない、と諭(さと)していました。興味があったら貸しビデオ屋さんで借りてください。その意味はきっと、貴方/貴女がオトナになった時、急に、「あぁ、そういうことだったのね」という形で悟るんじゃないかな]
・話につっこんでいくと深くてむずかしかった。 [そうですね。具体的な条件──数値など──が明らかでない架空の事例なので、部分的に深く突っ込んでも意味ないんですね。それよりも、話の構造そのものに着目することが大切なのです。この件に関しては、次回]
西村が担当する授業の様子は、<http://www.page.sannet.ne.jp/h_nishi/>で公開しています。できるだけ、授業当日に更新するように心がけています。