平成24年10月16日更新
3VA1クラス
第3回:平成24年10月16日 学習内容/授業の運営方法/学習課題(予習、復習)/課題の解答/今日の一言
※スペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故を題材に、倫理的考察や意思決定に必要な概念や用語などの解説を行う
・チャレンジャー号爆発事故に関する解説
・技術者と価値(特に、安全)
・リスクに関する概説
・対立する価値と倫理問題
・ステークホルダーと価値
・技術者の直面し得る倫理問題とその種類(ジレンマ問題、線引き問題など)
・倫理問題と設計問題のアナロジー
・倫理思想の特徴と代表的倫理学理論
・倫理的意思決定の方法(概論):エシックス・テストおよびセブン・ステップ・ガイド
・なぜ、科学技術者倫理が求められているのか@(メタ、マクロ、メゾ、ミクロの観点から)
・科学技術の歴史とエンジニアリングの特質
・近代科学技術と倫理思想
・技術者はなぜ特別の責任を負うのか
・技術者が共有すべき価値と倫理綱領(概説)
・PCを用いた講義
・チャレンジャー号爆発事故に関するビデオの視聴
・関連する視聴覚教材の視聴
・演習
など
・予習:教科書の第4章、第5章、第6章および第7章の精読(120分)
・復習:課題2(Agora上でチャレンジャー号事故について、倫理的問題構造およびステークホルダーなどの事実関係の分析)(180分)
課題の解答(表現はできるだけ原文のママです。[ ]内は西村の補足ないしはコメントです)
Q.スペースシャトルチャレンジャー号事故に関するビデオをご覧いただいて、個人で最初に感じたことは?
A.解説前の感想であることにご留意ください。講義の中でご説明しましたので、原則としてコメントは控えます。
・MT社とNASAとの関係がとても複雑だ。MT社の判断は非常に難しいと思う。MT社の収益の半分近くはNASAであるため、NASAの意見を尊重しなければMT社はつぶれていたかもしれない。国→(下請)NASA→(下請[=孫請])MT社。 [この件については講義の中で説明しました。実は......だったんですね]
・NASAの経営難とかで、みんなどうしようもないレベルで追い込まれていた。その社会背景(→冷戦、政治的な)自体が問題? 講聴会[この場合は「公聴会」]でえらそう[偉そう]に、[会社]幹部を攻めたてていたことに腹が立った。NASAだけの責任みたいな言い方。他人事のような感じ? [最後の部分については次回補足します]
・NASAの焦りがこの事故をまねいた[招いた]と思いました。
・NASAはO-リングの問題点をそこまで重視していなかったが、MT社のエンジニア達はその危険を十分に理解していた。なのに、打ち上げを止めることができなかったことは大きな問題だと感じた。
・NASAは安全性についての考えがうすかった[薄かった]ように思った。
・NASAもサイコオール社も元うけ[元請]からの圧力にはさからえ[逆らえ]ないのだから、技術者でもない国が利益だけを求めて軽い発言をすることは絶対あってはならないと思った。
・NASAやMT社の社長が技術者に圧力をかけたことが大きな要因だと思った。
・スペースシャトルを打ち上げても、打ち上げなくても損害はあるが[、]技術者として、打ち上げを止めるべきだったのではないかと思う。
・それぞれ異なる立場にいる人たちが、何を最重要項として打ち上げに乗り出すか、それとも中止するかを決めることについて思いが1つではなかったのかなと思う。また社長より、技術者が「安全か否か」を見定める方が確かであるから技術面、安全面について第一声(?)[原文のママ]をあげられるのは技術者であるべきだ。
・チャレンジャー号爆発事故の真相を聞いて、とても残念だと思う。下請(サイコオール社)の元請(NASA)からの圧力も解るが、それで打ち上げをやめさせるべきだったと思う。
・どんな小さいことが大きなミスになるかわからないから最善の策を取るべきだと思った。
・みんなでNASAを説明[=ここではおそらく「説得」の意]するべき。
・もっとも優先されるべきことは“人の命”だった。経営者はエンジニアを信用すべきだった。
・[MT社技術担当副社長の]ランド氏にかかる重圧はすごいものだと思ったが、技術者として打ち上げるべきでなかった。技術者として危険がある以上、最後まで反対すべき。
・安全性かを考えて行動していない。NASAが挑戦をする形になってしまう圧力があったからである。
・映画でもよくあるが、上の人間は自分たちの利益しか考えてないので困る。
・延期してまた次にやる[=打ち上げる]方が資金もむだ[無駄]にならなかったと思う。
・過去の失敗は生かしていかないといけないと思った。 [その通りですね。この事故から何を学ぶか、でしょうね]
・会社の経営と非難の声を聞きたくないという考えが先走り、同意にいたった[至った]理由が私には理解できない。100%打ち上げを見送るべきだったと思う。
・危険とわかりながら打ち上げる事のむぼう[無謀]さと、決定をくだす[下す]人の責任の重要さを知った。
・気密性という観的[=「観点」?]から建築では高気密、高断熱といった建築物が人気になりつつあります。しかし、もしその建築に欠陥があったのであれば、それは詐欺である。それと同用[正しくは「同様」]に、スペースシャトル計画において安全性に対して嘘をついて飛ばしたMT社の経営陣は詐欺師同様だと思った。 [我が家も高気密高断熱です。その分高価格でしたが、築後10年〜15年で元は取れたと思います。我が家には不満はないのですが、しかしこれだけの金額を投資して気密性や断熱性に問題があったら、正直なところたまったものではない、というのがユーザーとしての感想です]
・技術を過信するのは良くないと思った。常に最悪の状況を考えなければならないと思った。
・技術者として、スペースシャトルの打ち上げを止めていれば、このような事故が起こらなかったのではないかと思うが、国レベルの問題なので、とても難しいことだと思う。
・技術者としては安全性や顧客のことを第一に考えるべき。
・技術者として責任は何があっても果たすべきだと思った。後々いろいろ言っていて[=言い訳していて]、かっこわるかった。
・技術者の意見を最重要視すべきだと思った。
・技術者の意見を聞くことは重要だと思った。
・技術者の判断一つで大きな事故につながるということを知り、技術者にかかる責任の大きさを改めて知った。上からの圧力に負けないで、自分の利益を取るよりも、公衆の安全を第一に考えることが大切だと感じた。
・技術者は死ぬまで技術者であり、そのぼうし[帽子]をぬぐ[脱ぐ]ことはできない。だから、会社がつぶれ[潰れ]ようがどうなろうが人の命が無事であればまた後で会社はたちあげる[立ち上げる]ことができるし、シャトルも何度でも打ち上げられる。
・巨大な組織でなくても、その決定が人の命や利益に関連している時は、自らの軸をもって議論に参加すべきだと感じた。
・経営のためにという理由で打ち上げをしたようにみえた。これは責任者としては命を預かる者としてよくないと思う。
・経営者が自分の会社が危なくなるのを懸念してエンジニアの警告を押し切った判断が事故の原因であると考える。
・経営者としてではなく、技術者としての対応を取るべきであったと思う。
・経済的に考えるというより命を最優先にすべきだと思う。
・失敗して事故が起こりそうだったら中止して安全を確認してから打ち上げるべきだった。
・社長に厳しく言われると、意見を変えてしまうのも仕方がないと思う。
・少しでも事故の可能性があるのなら、打ち上げすべきではなかったと思った。O-リングの問題点や気温など、事故の可能性は高かった。
・少しでも事故の確率を下げるためにも技術者はとても大切な位置にあるのだと思った。
・人の命がかかっているのに杜撰すぎる。
・人はどうしようもない状態におちいったら冷静な判断ができなくなってしまうものなんだと感じた。
・人を死においやるようなものを扱う場合は、人の意見に流されないような強い意志が必要であると感じた。
・設計ミスがわかっているのに、なぜ、直せないのか。
・組織[による集団思考]の怖さを知った。
・組織の恣意的な解釈で人命を奪うようなことはあってはならないと感じた。
・組織内でのプレッシャーだけでなく、大元からのプレッシャーもあったはずで、技術者は困惑したと思う。
・損が大きいとしても人の命の関わることなので打ち上げるべきではない。
・打ち上げはするべきではなかったと思う。技術者はあくまで技術者の視点で考えるべきだった。NASAとのMT社との意識の差が大きすぎた。
・打ち上げるのが困難なのに[打ち]上げる意味が分からない。
・打ち上げをしなければ良かったと感じた。しなければ死人も出ずにすんだから。
・板ばさみになり動けなくなった状況で冷静な判断を下すのは難しい。不況な現在も容易にその状況が生まれやすい。学習しないと二ノ舞[正しくは「二の舞」]を演じるのは当然である。
・不安があるのに打ち上げを承認したMT社も悪いと思うが、圧力をかけていたNASAや国の方が問題だと思う。最悪の自体[正しくは「事態」]も考えて行動しなければならないと思った。
・未然に防げるような事であるから、すべての条件がある程度一致してから行うべきだと感じた。技術が進むと共に大統領が政治家もついていかなければならない。
・利益が優先なんだなと。
今日の一言(表現はできるだけ原文のママです。[ ]内は西村の補足ないしはコメントです) ※本日全数掲載
・NASAのような大きな企業ですら、危険よりも利益を優先する人だなぁと思いました。 [この種の問題については、組織の大小は直接には関係しないと思います。むしろ大きくなればなるほど、「自分には関係ないやぁ」となりがちな傾向があると思います]
・ジレンマ:自分の思い通りにしたい事が一方をするともう一方ができなくなる。今後社会に出れば多く選択することになる。 [まったくその通り。その対応については次回以降考えましょう]
・たのしかった。 [ありがとうございます]
・ねむい!
・ねむい。
・ねむかった。 [以上、昼食後であることと、どうやら皆さんがお疲れらしい──課題か何か?──こと、そして今回は学生諸君の活動が少ないのでどうしてもそうなりがちです。自分から活動するような要素をもっと取り入れたいと考えています]
・ひるたべすぎてねむかった。 [こちらも]
・家族が何より大切ですね!! [確かに。ホントに生活の基盤です。でも、社会人としては、それだけでなく「自分がやらねば誰が...」というものがあることも事実。貴方/貴女もいつかきっとその判断を迫られることがあると思いますよ]
・技術者よりも経営者という考えは、間違えれば大事故になると分かった。 [お気持ちはよくわかります。でも本当の経営者は単に金銭的な問題だけでなく、もっと大所高所から判断すべきものなのでしょうね。つまり広く、高い意味での「経営者」が求められているんでしょうね]
・恐ろしい出来事であった。 [先生のご両親の様子には何とも言えないものがありますね]
・結果だけ求めると良くないのではないかと感じた。 [そうなんです。短期的に考えるのでなく、長期的に、そして広い視野から考える必要があるんですね。じゃぁどうすれば......については次回以降、一緒に考えましょう]
・考えることが多かった。
・考えるほど難しい。 [以上、その通りですね。一部繰り返しになりますが、「それでは何が問題で、どうすれば...」については、次回以降考えます]
・今回の話しを聞いてゆでがえるの話しの怖さが分かった。慣れは怖いと感じた。 [まったくその通り。ご自分の問題として考えていただけただけでも講義の目的は達成されています]
・自分のことだけを考えたらいけないと思った。 [その通り。誰かのために何かをしなければならない、そういう時があるんですね]
・終わるのか終わらないのか...。 [これは講義のことでしょうか。予定より2、3分遅れたと思います。ゴメンなさい]
・集団思考になるこわさを理解した。 [まったくその通り。VAクラスの弱点でもありますから、自分を客観視する習慣をつけましょう]
・少し眠たかった。 [すみません。こちらについては上記ご参照]
・中間管理職にはなりたくない。 [気持ちはわかりますが、(実際にどうなるかは別として)生きていればやがてそのような中間の、そしていつかはその上の立場に立たされます。年老いても「下っ端」という訳にはいかないのです]
・判断ミスは、危険をあたえる。 [まったくその通り。視野を広く持つ必要があるんですね。これからの講義の中で考えましょう]
・板ばさみ状態のモートン・サイオコール社の立場になると反対しても反対しきれない状況はなんとなく分かる気がした。 [そうなんです。それが一番怖いんです。思考停止に陥っているんですね。そうならないためには......については、次回以降]
・眠い。 [すみません。できるだけ皆さんの活動を組み込むようにしたいと思います]
西村が担当する授業の様子は、<http://www.page.sannet.ne.jp/h_nishi/>で公開しています。できるだけ、授業当日に更新するように心がけています。