平成26年4月24日更新

3EA1クラス
第3回:平成26年4月24日 学習内容授業の運営方法学習課題(予習、復習)課題の解答今日の一言

学習内容

※スペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故を題材に、倫理的考察や意思決定に必要な概念や用語などの解説を行う 
・チャレンジャー号爆発事故に関する解説
・技術者と価値(特に、安全)
・リスクに関する概説
・対立する価値と倫理問題
・ステークホルダーと価値
・技術者の直面し得る倫理問題とその種類(ジレンマ問題、線引き問題など)
・倫理問題と設計問題のアナロジー
・倫理思想の特徴と代表的倫理学理論
・倫理的意思決定の方法(概論):エシックス・テストおよびセブン・ステップ・ガイド
・なぜ、科学技術者倫理が求められているのか@(メタ、マクロ、メゾ、ミクロの観点から)
・科学技術の歴史とエンジニアリングの特質
・近代科学技術と倫理思想
・技術者はなぜ特別の責任を負うのか
・技術者が共有すべき価値と倫理綱領(概説)

授業の運営方法

・PCを用いた講義
・チャレンジャー号爆発事故に関するビデオの視聴
・関連する視聴覚教材の視聴
・演習
など

学習課題 予習・復習

・予習:教科書の第4章、第5章、第6章および第7章の精読(120分)
・復習:課題2(Agora上でチャレンジャー号事故について、倫理的問題構造およびステークホルダーなどの事実関係の分析)(180分)


課題の解答(表現はできるだけ原文のママです。[ ]内は西村の補足ないしはコメントです)

Q.スペースシャトルチャレンジャー号事故に関するビデオをご覧いただいて、個人で最初に感じたことは?
A.解説前の感想であることにご留意ください。講義の中でご説明しましたので、原則としてコメントは控えます。

・1つでも異常がある場合、技術者としては発射を止めさせるべきであった。しかし、技術者と経営者は考えが違うので、技術者はどうしようもなかったと思う。
・1つの問題で大事故になってしまう。問題点を解決しなければ、高い危険性は取り除かれないのだと思った。
・MT社の幹部で打ち上げに賛成するか否かの投票で、反対であった技術担当副部長も最終的に賛成したことが、予想外であった。
・NASAとMT社がきちんと話し合えば事故は起こらなかったと思う。
・NASAとMT社は打ち上げても打ち上げなくても大きな打撃を受けたと思う。 [長い目で見た場合はどうでしょう?]
・あの状況でも打ち上げようとする。NASAのむぼう[無謀]っぷりに驚いた。
・いくら大統領という上からの指示があっても、安全を考えなければいけない。将来のアメリカにつながる[繋がる]日であったと思った。 [なお、大統領から直接指示があったわけではありません。NASAが忖度
(そんたく)したのです]
・エンジニアとして問題点を分かっていていながら会社の経営のことを考えて打ち上げに賛成したというのは難しい判断だと思う。しかしながら問題点を直してから安全にしなければいけないと思う。自分がエンジニアの場合なら反対すると思う。しかし社長となると、どうなのだろうと思った。
・お金と時間によって正しい判断ができなくなると思った。
・これだけ明確な問題があったにもかかわらず、スペースシャトルを飛ばしたこと。そのため、数人の宇宙飛行士の命が奪われたこと。NASAの運営方法に一番問題があったとしか言いようがない。
・サイオコール社の社長の判断は、経営者としては妥当だが、エンジニアとしてはもう少し低温での性能の検証を行うべきだった。
・サイオコール社は、不安を抱きながら最終的に同意してしまった。[正しくは「元請け」]のNASAとの関係もサイオコールにとっては非常に重要であったことが大きい問題であった。しかし、サイオコールは自分たちの作ったものであるため、最後まで主張を通すべきであったと思う。非常に難しい選択であると思った。
・スペースシャトルに問題があるのに責任を取る、取らないで打ち上げたことが残念である。
・スペースシャトルは旅客機ほど人命が掛かっていない。しかし、旅客機以上の技術があり、国力を証明する力も圧倒的に高い。権威と人命を天秤に掛けたら、権威に挟まれるのは必然であったということである。 [その通りなのですが、考えようによっては、「だからこそ打ち上げるべきではない」という考え方も可能だと思います]
・それぞれの会社の思惑から起きてしまった事故だった。下の人の意見を聞くことは大切。
・たった1パーツの問題でこれだけの大惨事が起こるので、技術者は本当に人の命に関わる仕事だと痛感した。 [まったくその通り。非常に重要な点に気づかれたと思います]
・どんなに上の会社から圧力をかけられても安全を最優先して、中止すべきだった。
・ボジョレーさんは上司に打ち上げを中止するように言っていたが、その意見が上層部の人たちの答えを変えることができなかったことが自分だったら嫌だなと思った。
・安全でない事を確実に証明できなかったことは、MT社の技術力が不足していたと思う。
・安全性が十分に確認できていたのなら打ち上げてはいけない。
・一つの部品だけでも、大きな事故に継る[正しくは「繋がる」]と感じた。
・一人の正しい考えも、複数人や立場が上の会社などとの思惑で潰されてしまい、全体の考えとして責任をとらされ[取らされ]てしまう。
・仮に中止していたら、多額のコスト負荷がかかると思う。 [そうなのですが、(1)もし数日の延期だったらどうでしょう。また(2)打ち上げて事故に至った時のコストと、中止(実際には延期)した時のコストを比べてみるとどうでしょう。この点については次回の講義で関連する事項を学びます]
・企業の言い分も技術者の言い分もわかります、どちらも引くに引けない状況であってその中で企業と技術者の間で権力関係を最初の段階で定義すべきであったと思いました。
・技術者として何が問題であるのか分かっていても、属する集団と他集団との利害によって、その問題の解法がはばまれてしまうことは、当人として非常に苦しいことであると思った。
・技術者と経営者という2つの立場のため技術者だと無理だと思っても経営者としてはどうにかしたいと考えるしかないのが大変だと思うし、難しいと思う。
・技術者は技術者の帽子を脱いではならないと感じた。頭がいい人達のはずなのに。ここまで視野が狭くなるものなのかと感じた。 [非常に鋭い指摘だと思います]
・技術者側が打ち上げに反対したのならば会社の上の人も技術者も信用して反対すべきだった。技術者が現場で見ているのだから意見を尊重すべきだ。
・巨大な組織同士が大きなつながり[繋がり]を持つと、どうしても個人が小さい組織の意見が反映されにくいんだなと思った。 [その通りなのですが、その「繋がり」って、現代社会そのものです。つまりわれわれ自身の問題なのです]
・空を飛ぶということは落ちる危険性があり、落ちると多大な被害が出やすく、安全性が一番必要となる。
・経営者として考えると、会社の売り上げの半分をしめるNASAからの圧力を引けて、Rランド氏みたいに延期を要求することはできないと思う。このような大型プロジェクトを確実に安全だと分かっていないのに実行するべきではないと思う。
・経営者と技術者との立場の違いによる問題はなくさなければならない。
・経営側には、現場の意見を重視することも大事だと感じた。
・元うけ[元請]と下うけ[下請]の力関係は弱くなってしまう。そのため正しい事を言っても相手にしてもらえず、このような事故が起こってしまい残念である。NASAの打ち上げたいという気持ちと技術者の100%安全ではないので延期したいという気持ちで、こういった意見がぶつかりあい正しい判断ができなくなっていた。利益やめいよ[名誉]のために正しい判断ができないのが問題だと思った。
・元々何が起きるかわからない所に踏み込んでいく以上、確実な安全性という物は無いが、少しでも不安があるのなら、止めた方が良いが、実際には周りや上との関係もあり、止めるのは難しい。そういった部分で人を説得、もしくは相手をためらわせる事の出来る交渉術は必要だと感じた。
・個人の意見は周りの状況やプレッシャーで変わってしまう事がよく分かった。
・最終決定は経営者であり、技術者がいくら反対してもその意見が全く反映されていないので複雑な気持ちになった。
・自分たちのメンツ[面子]と人の命のどちらかが大切なのかを理解していないと感じた。
・重大な不安要素があるにも関わらず、安全かどうかの判断材料もないのに実行に至るのは危険であるということがよくわかった。
・上が下の人間の言うことを聞けなかったのが原因だと思う。
・乗っている人は何もできないんだなと思った。
・条件として、去年の10℃より低いと述べていたのに、スペースシャトルを打ち上げたのは、私は考えられない。人間は、命が1番大事なので、もっと優先順位を考えるべきだ!
・状況が状況なので仕方ない判断なのかもしれないが、技術者としては打ち上げられない。
・人の命がかかっているのだから何よりも安全性を重視すべきだったと思う。
・政府もNASAもMT社も事情があり実行は仕方なかった故に惨事の結果も仕方なかった。
・前回の授業でもそうでしたが、どちらの選択をしても良くないことが起こる場合、優先することを決定するしかないと感じた。 [この点については次回の講義で考えます]
・前回の授業で学んだ「集団での思考の変化」というのがそのまま現れた事故だと思った。 [その通りですね]
・組織の上の立場に逆らうことは容易ではないと感じた。
・組織の体質が変わらなければ、このような事故はなくならないんだなと思う。 [まったくその通り。講義の後半ではまさにその問題を考えます]
・打ち上げが失敗する確率が高かったのがわかっていたから、もっとエンジニア(現場)の意見を重視するべきだと思った。
・打ち上げ直前ですでにガス漏れを起こしていたにもかかわらず、打ち上げてしまったことにはとても疑問だ。第一に大切にしなければいけないものを間違っている(そう言えるのは結果論な気もする)。
・大規模な団体での決定を中止させることは難しいと思った。気候などの自然現象も考えて納期にまにあわせることが大切なのかもしれない。それでも安全が一番であるので、いざという時は覚悟を決めなくてはならない。
・燃料ガス漏れが心配され前年よりも悪い状体[正しくは「状態」]なのに飛ばしてしまったことは、MT社副社長をふくめ利益を求めすぎた幹部などの原因があると考える。
・利益のことだけを考えて行動してはいけない。その行動のリスクを考えなければならない。 [リスクについてはこれからの講義の中で考えます]


今日の一言(表現はできるだけ原文のママです。[ ]内は西村の補足ないしはコメントです) ※本日全数掲載

・「いつもやっている」や「みんなやっている」という考え方が危険なのだと感じた。 [まったくその通り。なおかつ、われわれ自身の問題でもあるんですね]
・NASAのスペースシャトル決行はどう見てもタチが悪いものだと思った。 [その通りなのですが、たとえば福島原発の問題だって同じような面があるのではないでしょうか。つまり他人事ではないのですね]
・ステークホルダーの重要度には人によって違いが存在しているため、考えるのが大変。 [その通りなのですが、それが徐々にでもできるようになると、相手の考え方がとても良くわかるようになります]
・スペースシャトルを台材[正しくは「題材」]としていたので面白かった。このことについて、いろいろ調べてみたいと思った。 [ぜひぜひ]
・スペースシャトルがかっこよかった。 [確かに。飛行機の形態にはやはりある種の必然性があり、とても美しいものがありますよね]
・スペースシャトルが少しわかってよかった。 [ぜひ続きはご自分で調べてみてください]
・スペースシャトルのDVDでMT、NASAの両方の気持ちが理解できた。 [それは貴方/貴女がかなりの能力を持っているということですよ]
・スペースシャトルをしっかり点検すれば事故は起こらなかったと思う。 [気持ちはわかるのですが、今回は設計ミスなので、点検だけではどうにもならないと思います]
・チャレンジャー号のような事故はもう起きて欲しくない。 [まったくその通り]
・まだまだ自己の視野はせまい[狭い]と感じた。 [半分はその通りなのですが、半分は違います。「自分は了見が狭い」と気づいたその時はすでに、まだよく見えていない「大きく、広い」世界の存在に気づいているのです。『星の王子さま』で伝えたかったのは、そういうことです]
・ゆでがえるの状況はどこでも起こりえることだから危険だと思った。 [まったくその通り]
・安全が第一。自分は最後。
・安全第一。
・安全第一だと思った。 [以上、ボジョレーさんの主張には説得力がありましたよね]
・課題がんばろうと思う。 [ぜひぜひ]
・韓国の船も似たような問題だな。 [そうなんです。伝えられている情報からすると、日本から購入後の設計ミス、採算性優先の運行(バラスト水の排水や過積載など)、そして安全軽視。事故の被害者には申し訳ないのですが、救いようのない話ですよね]
・技術者として安全を第一に考えなければいけないと改めて考えさせられた。
・技術者の「ありかた」について考えさせられた。
・技術者の難しさ知った。 [以上、まったくその通りですね]
・技術者の倫理は難しいと感じた。 [そうなんです。だからこそこの科目や「技術者と社会」などがあるんですね]
・技術者は製品の向上だけでなく、倫理的な問題も考えなければならないと知った。 [そうなんです。良い点を突いていると思います]
・技術者倫理は難しいものだと感じた。
・経営者と技術者両方の立場に立つのは難しい。 [以上、仰る通り難しいです。だからこそこの科目の履修を通じて一緒に考えていきましょう]
・交渉系の技術も技術者は身につけておくべき。 [そうなんです。最近はいかに効果的に訴えるか、ということも重要になっているんですね]
・口頭での書記を行う場合、早口で聞き取りにくい場合があるので黒板に記述する等してほしいです。 [わかりました。実は時々そのようにしているのですが、これまではその必要はないと思って書いていませんでした]
・工大でMACって使いづらくないですか? [その通り。実はほとんど完全なWindowsマシンとして使っています。必要に応じてMacOSに切り替えます]
・今日はねむかった[眠かった]。 [う〜ん、食事前だというのに、どうしたんでしょう]
・昨日彼女と付き合って2ヶ月たちました!! 幸せです!! [若いなぁ。頑張ってください(もちろん嫌味や僻
(ひが)みではありません)]
・視野を広く持って行動することはとても大切だと思いました。 [まったくその通り。非常に重要な点を指摘していると思います。視野狭窄
(きょうさく)に陥ると建設的な判断ができなくなるんですね]
・事故が起きたら大変だと感じた。 [そうなんです。皆さんが造ったモノ(ハードやソフト)が原因で、このような大事故になってしまう可能性があるんですね]
・自分がランドさんの立場であれば「技術者の帽子を脱いで、経営者の帽子をかぶったらどうだ」と言われた「打ち上げ反対」とは言えないと思う。正しい判断ができるようになりたいです。 [その通りですね。「じゃぁ、どうすれば...」についてはこれからの講義の中で考えましょう]
・実際の大きな問題を取り上げてもらえたので非常に興味深かった。 [お話ししたように、第一次世界大戦頃からの歴史と政治の産物なんですね。だから、どこまでやるかは別にして、この社会のことを考える必要があるわけです]
・上からの圧力で苦労する立場にできたらなりたくない。 [残念ながら社会に出ると、程度の差こそあら必ずこのような立場に立たされることがあります。「その時どうするか」をこれからの講義の中で考えようというわけです。この科目、役に立ちそうでしょ?]
・上に立つと判断するのは難しい。 [その通り。センセイもこの4月からさらに偉い立場になってしまったのですが、本当に大変でいろいろなことに気を使います]
・人の命に関わるため安全が第一だと感じた。 [まったくその通り]
・人は権威のためならばいくらでも冷酷になれる。兵士でも大統領でも。 [ちょっと意味を掴みかねるところがありますが、立場によっては確かにそうなることはあると思います]
・青臭いこと言って孤立するか、迎合してしらんぷりするか、要はどちらを選ぶか。 [気持ちはわかるのですが、貴方/貴女はまだ若いのでそのように考えるのだと思います。「年を取れ」という意味ではありませんが、見方を変えると結構建設的は解決方法を見出すことができるものです。これからの講義の中でそれを考えていきましょう。あまり焦らずに]
・他人の意見に流されてはいけないと強く思った。 [そうですね。われわれはそういう傾向を持っていますからね]
・難しい。 [複数。たぶんビデオをご覧になって「自分だったら...」とお考えになったんだと思います。それについてはこれからの講義の中で考えます]
・非常に考えさせられる内容でした。宮城県出身なので、原発関係もあるとうれしい。 [センセイは新潟県中越沖地震で被災し、放射能漏れを起こした柏崎刈羽原発の近くに住んでいます。中に入ったこともあります。その件は、ちょっとではありますが後日、講義の中で考えます]
・論議の内容が濃くてとてもおもしろかった。 [ありがとうございます〜。気合、入ってますよぉ]


西村が担当する授業の様子は、<http://www.page.sannet.ne.jp/h_nishi/>で公開しています。できるだけ、授業当日に更新するように心がけています。


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