平成26年10月14日更新
3FS1クラス
第3回:平成26年10月14日 学習内容/授業の運営方法/学習課題(予習、復習)/課題の解答/今日の一言
※スペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故を題材に、倫理的考察や意思決定に必要な概念や用語などの解説を行う
・チャレンジャー号爆発事故に関する解説
・技術者と価値(特に、安全)
・リスクに関する概説
・対立する価値と倫理問題
・ステークホルダーと価値
・技術者の直面し得る倫理問題とその種類(ジレンマ問題、線引き問題など)
・倫理問題と設計問題のアナロジー
・倫理思想の特徴と代表的倫理学理論
・倫理的意思決定の方法(概論):エシックス・テストおよびセブン・ステップ・ガイド
・なぜ、科学技術者倫理が求められているのか@(メタ、マクロ、メゾ、ミクロの観点から)
・科学技術の歴史とエンジニアリングの特質
・近代科学技術と倫理思想
・技術者はなぜ特別の責任を負うのか
・技術者が共有すべき価値と倫理綱領(概説)
・PCを用いた講義
・チャレンジャー号爆発事故に関するビデオの視聴
・関連する視聴覚教材の視聴
・演習
など
・予習:教科書の第4章、第5章、第6章および第7章の精読(120分)
・復習:課題2(Agora上でチャレンジャー号事故について、倫理的問題構造およびステークホルダーなどの事実関係の分析)(180分)
課題の解答(表現はできるだけ原文のママです。[ ]内は西村の補足ないしはコメントです)
Q.スペースシャトルチャレンジャー号事故に関するビデオをご覧いただいて、個人で最初に感じたことは?
A.解説前の感想であることにご留意ください。講義の中でご説明しましたので、原則としてコメントは控えます。
・20数回事故が起きなかった程度の安心性[この場合は「安全性」でしょうね]では、すごく危険だと考えさせられた。
・MT社はもっと明確な証拠や根拠を提示してNASAを説得するべきだったと思う。
・NASAがOリングを過信しすぎていたことにも原因があると思いますが、一番は利益を優先したことが今回の問題点だと感じました。
・NASAがモートン・サイオコールから受け取ったO-ringをもっと調査すれば良かった。会社の財務に大きく関わることなのに雑すぎるマーケティングである。
・NASAがロケットの打ち上げに対しての根拠や接合部に過信しているのはおかしいと思った。
・NASAと下請けのモートン・サイオコール社の関係性に問題があったため、この様な事故が起こってしまった。この事故が二度と起こらないように、安全性に力を入れるべきと考える。
・NASA側からの圧迫によってサイオコール社が打ち上げを求めたような感じとなっていた。NASAは過去の打ち上げに対して過信しているように感じる。
・NASA側は、予算もないし延期したくない。MT社は延期を理由にせめられ仕事をなくしたくないという。どちらも最終的に安全よりも利益を重視したため起きた事故なんだと思った。
・SRBの技術開発を行っている側の意見を甘く考え、NASAは自社の経営状況などをふまえて打ち上げることを推したのは、非常に危険だと思った。少しの判断ミスで人命も失ってしまう大事故になるのだと改めて思った。
・エンジニア、経営者、両者の立場から考えると意見が分かれるのは仕方のない[こと]と考える。最終判断におけるプレッシャーにも最適な意見は重要である。
・お金を取るか安全を取るかの選択は難しい、1%でも失敗するのならやらない方がよい。 [数値に関しては、次のディスカッションで考えることになります]
・この事件によってモートン・サイオコール社の信頼性は失われたと思う。
・こんな巨大なプロジェクトを行っているのだから、毎回失敗するかもしれないという考えを持って行動するべきだと思う。
・サイオコール社側にとっては、すごく難しい判断であったと思う。
・チャレンジャー号を飛ばす前から、前回のことや現在の気温からどのようなことが起こるか判断できていたのに事故が起きてしまったのは残念。
・チャレンジャー号爆発事件は事前に危険であるとわかっていたが私利私欲に物事を考え発射に踏み切った。反対するならば思いだけでなくやめさせなくてはならないと強く感じた。
・なぜ2重のOリングが気温2.2度でも安全であると、NASAは過信し続けたのか。(下請会社の主張を信用しなかったのか)
・なぜ一度は打ち上げを反対したのに最終的に打ち上げにさんせい[賛成]したのかと思った。
・プロジェクトに際しても、妥協や過信は危険を呼ぶものだと感じた。
・[技術担当副社長の]ボブ・ランドさんは最後までエンジニアとして責任を持った行動をするべきだったと思う。
・もっと打ち上げの反対を強く意見するべきだと感じた。
・やはり下請の立場上強く言えないことはある。そのような社会を変えていく必要があると考える。
・ロジャー・ボジョレーにもう少しプレゼン能力があれば違った結果になったのかもしれないと感じた。
・悪条件とわかっていて、スペースシャトルを打ち上げたことについて私は打ち上げを強行したNASAには残念に感じたが、危険性を指摘したモートン・サイオコール社には打ち上げ中止を押し通して欲しかったと感じた。
・安全より経営面を優先して意思決定を下す技術者に、不信感を抱いた。
・安全性を重視すべきであると改めて思った。重視すべき価値をしっかり決めていきたい。
・下請会社であるモートン・サイオコール社の利益の半分をNASAから得ていたとしてもNASAの意見を押し切って打ち上げを反対するべきだと思った。利益のことを考えずに。
・科学技術は、それらを利用する人の安全を第一に考えなければならないと感じた。
・過去の小さなミスを[見]のがさず考えて改善を行うことが大きなミスをなくすことに繋がる。 [まったくその通り]
・会社では上司の命令は絶対のようなものであると感じた。技術者と経営者の違い...。
・会社の経営のこと(政府などからの圧力のこと)を考えたとしても打ち上げに賛成するべきではなかった。
・外からの意見や圧力に左右されるのではなく、自社の商品を見極め、決断をすべきだと感じた。
・確かに、打ち上げの前日までNASA側が曖昧な判断ばかり迷うと技術的な問題も見落されるだろうと感じた。
・関係者が多いと適切な意志決定をすることが難しくなるのだと思った。 [確かに]
・危険であることは予想ついていたが、やはり経営をしていくためには仕方ないという考えだったのだと思う。
・危険性が高いことを認識しながらも、打ち上げなければならなかった。NASAの威圧に反発できなかった。
・危険性が高いと分かっていたのならお金よりも優先するべきだったと思う。
・気温が低すぎるという条件をもっと慎重に考えるべきだと思った。
・技術者での担当者がやめた[止めた]方が良いと言っていたなら止めるべきではないか。ボジョレーさんも状況の説明をはっきり危険と言えたら事を防ぐことができたのではないか。
・経営の立場の人間が下請の関係を意識するあまり判断ミスをしてしまった事が悲しい。
・経営よりも安全を第一に考えるべきだった。
・経営者の立場はとても、苦しい立場だと思う。しかし、だからこそ経営者は打ち上げ反対の立場を取るべきだと思われる。
・経営的視点から見れば、打ち上げるべきなのかもしれないが、技術的には危険であり打ち上げるべきではない。これらをまとめあげた意見を作るのは難しいだろう。
・結果からすると、打ち上げは中止すべきだった。だが、経営面を考慮すると、賛成せざるをえない状況だった。やはり、事例が発生してからでないと倫理は発展しないのかもしれない。
・結果は誰にも最初は分からないけど、何を優先することが大事か、もっと考えるべきだと思った。
・今後も仕事をもらうためには必要だと感じたのかなと思う(個人ではない)。組織として、利益を追求した結果。
・作った人達が延期をすべきと判断したにもかかわらず、意見を聞かなかった。NASA、政府の対応が悪いと感じた。
・事故が予想されても、MT社の収益の半分以上がNASAからの下請けからのものである。反論できない状況であると思う。
・自分が技術担当副社長の立場だと、反対で通すのは難しいと思う。
・自分の意見をしっかりと伝えることは重要であると感じた。また、十分な安全性が確保されるために、「〜だろう。」という考えを捨てる必要があると思った。
・授業内の[仮想事例では]F1[レース]決行に賛成であったが、ゆらいだ[揺らいだ]。
・周りの意見や世間の目を気にせずに自分の言いたいことをはっきりと言わなければならないと感じた。
・将来機械技術を扱う立場として、チャレンジャー号爆発事故は、深く心に刻むべき事例であると感じた。特に、課外活動において危険を伴う作業に賛成してしまったことを思い出し、反省した。 [後半は過去にそのような経験があったということでしょうか]
・上からの重圧はあると思うけど人命第一だと思う。
・人の命に関わる意思決定はとても重要なことだと感じた。
・人の命を守るためなら、打ち上げを延期するべきだったと感じた。
・責任はトップの人間ではなく携わった人が負わなければならないことの重要さを知り、慎重にならなければならないと思った。
・責任逃れではないが、上からの決定を変更するのは難しいと思った。
・大きなプロジェクトであったために中止にすることは難しかったと思う。危険性が分かっていても中止することができない当時の体制に問題があると感じた。 [まったくその通り。システムの問題だったんですね。つまり皆さんの専門分野です]
・長い目で見てなにが利か害かを考えることは大切だと思った。安全第一が大切か思った。
・爆発したから出ている問題であって、皆成功すると思っていたはず。
・防ぐことのできる事故だったので犠牲者を出すのはいけない事件だと思った。
・問題を把握しておいて解決しないのはだめだと思った。
・予測していたことなのにその上で実行したことは単純に嫌な感じがする。
・利益よりも安全を考えるべき。
・利益を求めて不安要素を無視した結果、ああなったということを考える。
・利潤を最優先にするのではなく、リスク管理を行った意思決定を行う必要があると感じた。 [リスクについては今後の講義の中で考えます]
今日の一言(表現はできるだけ原文のママです。[ ]内は西村の補足ないしはコメントです) ※本日全数掲載
・Agoraにログインすることを忘れない。 [ぜひ]
・ステークホルダーの考え方がかわった。 [ありがとうございます。実際にやってみるとかなり難しいので、繰り返し練習するようにします]
・スペースシャトルの製造にあたり、完璧でなくても良いという認識に驚いた。 [講義でお話ししたように、自動車ですら約3万点の部品から構成されています。飛行機やロケットになるとさらに桁が違います。それらが常に完璧であるというのは実際問題として不可能です]
・安全が一番大切だと改めて思った。
・安全が第一だと改めて思った。
・安全性に重視して行うべきだったが、会社の利害や忠誠などを考えるとやはり難しい問題になってくる。
・何よりも安全を重視するべきだなと思った。 [以上、公衆(利用者、消費者、一般市民)の安全が第一なのはその通りです。ただし値段その他などのバランスも取る必要があります。次回以降の講義で考えましょう]
・技術者として成功することはあたりまえ[当たり前]と考えてはいけない。問題解決がしっかりと出来て初めてエンジニアとしての責任と言える。 [そうですね]
・技術者の思考を学びました。 [ありがとうございます。でも勉強は始まったばかり。あまり焦らずに]
・結局は[MT社上層部]全員賛成だったのが残念。 [少しお話ししましたが、集団思考に陥っていたんですね]
・最も重視すべきは配属は何なのか考えてみようと思う。 [ぜひぜひ]
・人間である。仕方ないと思う。
・人事だから好きに言える。 [以上、その通りの部分があります。重要なのは、そこから何を学び取るかなんですね]
・[技術者の]責任の重さを感じた。 [重要な点ですね。でも、それと同時に、とても大きなやり甲斐があるということもご理解いただけると嬉しいです]
・[背景にある第一次世界大戦以降の]戦争の話、おもしろかったです。 [「ヨーロッパが負けた」と考えてみると、その後の歴史の見方がずいぶん変わるでしょ?]
西村が担当する授業の様子は、<http://www.page.sannet.ne.jp/h_nishi/>で公開しています。できるだけ、授業当日に更新するように心がけています。