平成28年10月13日更新

3BB1クラス
第3回:平成28年10月13日 学習内容授業の運営方法学習課題(予習、復習)課題の解答今日の一言

学習内容

※スペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故を題材に、倫理的考察や意思決定に必要な概念や用語などの解説を行う 
・チャレンジャー号爆発事故に関する解説
・技術者と価値(特に、安全)
・リスクに関する概説
・対立する価値と倫理問題
・ステークホルダーと価値
・技術者の直面し得る倫理問題とその種類(ジレンマ問題、線引き問題など)
・倫理問題と設計問題のアナロジー
・倫理思想の特徴と代表的倫理学理論
・倫理的意思決定の方法(概論):エシックス・テストおよびセブン・ステップ・ガイド
・なぜ、科学技術者倫理が求められているのか@(メタ、マクロ、メゾ、ミクロの観点から)
・科学技術の歴史とエンジニアリングの特質
・近代科学技術と倫理思想
・技術者はなぜ特別の責任を負うのか
・技術者が共有すべき価値と倫理綱領(概説)

授業の運営方法

・PCを用いた講義
・チャレンジャー号爆発事故に関するビデオの視聴
・関連する視聴覚教材の視聴
・演習
など

学習課題 予習・復習

・予習:教科書の第4章、第5章、第6章および第7章の精読(120分)
・復習:課題2(Agora上でチャレンジャー号事故について、倫理的問題構造およびステークホルダーなどの事実関係の分析)(180分)


課題の解答(表現はできるだけ原文のママです。[ ]内は西村の補足ないしはコメントです)

Q.今日はグレゴリー・ベイトソンの「ダブルバインド」をご説明しました。例として挙げた、「教師の本当のメッセージ」は何だと思いますか。
A.講義の中でご説明しましたので、原則としてコメントは控えます。なお、講義内でご説明したように、このネタは初めて使用しました。皆さんの反応を踏まえて、次はもっとうまい使い方を心がけます。

・"悪いことをした"という事を自覚してほしい。
・「かびん[花瓶]を落とした」という事実は、悪いことだから。
・「なんで注意して、やめさせなかったのか。」と伝えたいのだと思う。
・Yes,Noのことを問題としていない。
・あやまち[過ち]をすぐに認めること。
・[ひでちゃんに]あやまって[謝って]ほしい。なにか[何か][より深刻な問題が]おきる[起きる]前に注意するべきだった。
・こういった事が起きた理由はその場の雰囲気がもたらしたものであるということを伝えたい。
・この先生は、ただ怒っているだけだと思う。「伝えたいこと」はない。でも自分先生だったら、生徒のケガの心配を初めにする。 [最後の部分は素晴らしい。ただし、幼稚園児および小学生は「生徒」ではなく「児童」です。学校教育法をお読み下さい]
・たまたま花びんを割ったのは秀ちゃんだったかもだが、この事件の問題点は、生徒が教室を走り周っていること。悪いのは秀ちゃんだけじゃなく、走ったという事実。たまたま花びんが割れたが、他の事故も予想される。よって、機険[正しくは「危険」]が予想されるような行動はよく[良く]ない、してはいけないことを伝えたい。 [確かにその通り。でも下記(↓)にある通り、花瓶をこんな場所に置いた先生の責任は?]
・どちらにしろやってはいけないことをしたらあやまることを教えたい。あとは、先生のきげんによってはストレスをはっさんさせたいのかもしれない。
・ひでちゃんにまず花びんを割ったことを謝まってもらいたかった。
・みんな注意してと伝えたい。
・わるい[悪い]ことをしたら怒られる。
・悪いことが起こる環境が許せない。 [その通りなのですが、その環境を整備したのは先生自身ですよね]
・隠さず正直に謝るなどの行動や事前説明ができるか試している。そもそもこのようなケースが起こる前にさわいだり[騒いだり]するなと言いたい。
・何をしても怒られるように、不合理なことは起きること。 [まったくその通り。不合理そのものです。そしてそれをもたらしたのは、他ならぬ「先生」です]
・花びん[「花瓶」。以下同様]があるところで走ってはいけないこと。
・花びんが割れたことで子供がケガしていないか確認するのが教師だと思う。 [確かに]
・花びんが割れた怒りをどこにぶつけたらよいか分からない。なぜみんな危険を事前に止められなかったのかと言いたい。
・花びんが割れるとケガの危険もある。花びんがあると知っていたのにその周囲で遊んでいたことを注意したい。
・花びんが割れる前に、教室で走り回っていた人を誰も注意しなかったこと。
・花びんを壊した子に自分が悪いことをしたということを認めて、反省してほしい。
・花びんを割るようなことをするな。してたら止めろ。
・感情的になり過ぎて教育的な意見で伝えたいことはない。 [たぶん、その通り]
・危ないことをしない。
・教室ではしゃぐな。危ないことをするな。割れる前に止めろ。
・教室で走りまわっては危ない。周りの人も注意をするべき。
・教室で走り回るという危険な行為を周りの人に止めて欲しかった?
・原因を教えてほしい。
・自ら申し出て謝れ。
・自ら申し出ることの大切さ。不満の発散。 [後者は適切だと思います]
・取り返しのつかないことがあるということを伝えたかったのでは。 [確かに、そういう面はあるかも]
・正直に自分から名乗り出て謝ってほしい。
・先生が花をとても大事にしていたこと。だいたい倒れやすい教卓にガラスの花びんをおくほう[置く方]が考えなし。 [まったくその通り]
・先生が見ていない間でも、危険な行為をしている生徒がいれば、誰かが先生に代わって注意をすべきであると伝えたかったのでは。 [まぁ、確かに。「生徒」については上記(↑)ご参照]
・先生が用意した花びんを落とされた怒り。 [多分そうですよね]
・先生の大切な花びん壊さないでよ!!! 技術者はやめるべきと判断していたので、信じるべきだった。 [前者、後者ともに、異なる意味でその通り]
・先生[が]犯人探しを強要。 [核心を突いていると思います。おぉ、怖]
・走っていて危いと思っていて、誰もその子を注意しなかったから連帯責任と言っている。傷[=「怪我」の意]したらあぶない。
・走り回ったら止めろ。
・誰がやったかでなく花びんを割ったこと自体に怒っている。 [たぶん、そうなんでしょうねぇ。私怨
(しえん)というヤツです]
・注意力を持たなければいけない。
・怒られた後生徒[上記ご参照]にどのような行動をしたらいいのかを教えてもらいたい。先生の大切なものを壊されて悲しい。 [後者がホンネでしょうね]
・反省してほしい(かばうのでもなく押しつけ合うのでもない)。
・不満の解消。働くことの大変さを改めて知った。 [後者はビデオの内容ですね]
・物を壊すと怒られるということ。
・理不尽を教える。 [まったく、その通り]


今日の一言(表現はできるだけ原文のママです。[ ]内は西村の補足ないしはコメントです) ※本日全数掲載

・「安全性」を妥協してはいけないと感じた。 [その通りですが、それを過度に強調すると。何もできなくなってしまいますよ。この件に関しては、これからの講義で考えます]
・NASAが安全性よりも経営を優先したことが最大の原因だったと思う。 [その通りなのですが、NASAも一種の下請け企業。じゃぁ、どうすれば......については次回以降考えます]
・アメリカ政府は責任をとらなかった[取らなかった]のだろうか。 [やはり「取っていない」と言うべきでしょうね]
・がんじがらめは怖い。 [その通り。「じゃぁ、どうすれば」の、ひとまずの解答が「創造的中道法」です。次回以降ご説明しますが、実質的には今日の教室内の話などで説明済です]
・これ[=チャレンジャー号事故]を教訓として、同じような事故を起こしてはならないと思った。 [その通り。ポイントは、この先人の犠牲から何を学び取るか、です]
・[チャレンジャー号事故の件は]しかたないような気がした。 [気持ちを分からなくはないのですが、それならば、いつか貴方/貴女がその立場で過ちを犯し、責任を取らされますよ。この講義ではこれから、「どうしたらそのような事態に陥らないか」あるいは「万一、残念ながらそのような状況になったら...」を考えます]
・だれ[誰]もが責任のがれ[逃れ]したい気持ちも分かる。責任をとらなくて[取らなくて]もいい[部]下は正しい意見や判断をできるかもしれないが、様々なプレッシャーのかかる上は難しいかも。 [素晴らしい。まったくその通り。でも──否定の意味ではありません──貴方/貴女もいずれその立場になるかもしれません。じゃぁ、どう考え、どう行動するか、をこれから一緒に考えましょう]
・ちゃんとした大人になりたい。 [こちらも、別な意味で素晴らしい。後で言おうと思っていたことを先取りされてしまいました。貴方/貴女はたぶん、ご自身の立ち位置を切り替えることができているんだと思います]
・どれだけ人はプレッシャーによわい[弱い]のかかくにん[確認]できるものであり、組織のはんだん[判断]は、プラス思考[ここでの意味は「たぶん何とかなる」くらいの意味]だったので、マイナスの方[≒リスク]をきちんと考えるのが必要だと思った。 [その通りですね]
・なぜNASAは早く打ち上げをしたかったんだろう、延期して4月ではダメだったのだろうか。 [申し訳ないのですが、4月では遅すぎます。実際にはもっと早く打ち上げできたはずです]
・圧力や金銭的問題があったとしても、安全を最優先すべきである。 [基本的にはその通りなのですが、当時の現場は、それを冷静に判断できない状況に陥っていたんですね]
・危険性を顧みず、自分たちの利害を有先[正しくは「優先」]するのは良くないと思った。 [残念ながら、現実の社会では良くあることです。ちなみに、「顧みず」の使用法は適切ではありません]
・技術者がいてこその経営者だと思う。名誉もなに[何]も死はムダだと思う。 [その通りなのですが、逆に言うと、経営者がきちんと判断できるように技術者から適切な情報を提供する必要があります。最後でご説明したように、残念ながらボジョレー氏はこの点において失敗しています]
・技術者としてではなく経営者として考えるという言葉で会社の圧力がよく分かる。 [でしょ? じゃぁそれに反訴するためには、相当な力が必要です。だからやっぱり、勉強しなくちゃいけないんです]
・技術者の立場か経営者の立場か板挟みになっていたMT社の副社長は辛かっただろうと思う。冷静な判断ができなくなることの怖さを感じた。[花瓶の例で]子供が走り回るのは容易に想定できるのに、教室の、それも不安定な教卓に花びんを置く先生が1番注意されるべきだと思う。 [前半と後半で意味は異なるのですが、それぞれまったくその通り。センセイがお伝えしたかったことを十二分にご理解していただけたようですね]
・技術者は[、]非常に重用[正しくは「重要」]な現場を請け負っているにしては立場が弱すぎる気がする。 [まったくその通り。これからの技術者には、そこを経営陣や上層部にどうやってアピールするかが求められるようになります]
・技術担当副社長として責任が大事! [気持ちは、わかる。でも彼の苦悩は、その表情に十分に表れています]
・誤った選択をしたために招いた事故を見て、悲しくなった。 [その通り。我々が為すべきことは、そこから何を学び、行動するかだと思います]
・私だったら打ち上げないだろう。 [その通りかもしれませんが、じゃぁ、どうやって関係者を説得しますか?]
・事故が起こることは、私でも予想できる。周りの圧力がとても怖い。追いつめ[詰め]られると何をするかわからない。 [そうなんです。ポイントはむしろ、「そうならないようにするためには」なんでしょうね]
・周りが見えなくなると、ろくなことにならないんだなあ〜。 [まったくその通り。閉ざされた組織内ではその論理は通用しても、後になって、もっと広い視点で、より多くの情報でその判断を吟味したら......という発想にはなかなかならないんですね]
・少しでも危険があれば、中止するべきだ。2回目での問題を改善すべきである。 [でも、上司あるいは契約先の指示、経費面などとのバランスは?]
・上の立場の人の決定で全て決まると分かった。 [その通り。でも貴方/貴女もいつかはその「上の立場の人」になるんですよ]
・常識の甘さが大きな事故につながり、防げたと思う。 [ご指摘の通り確かに、精神的に追いつめられて視野狭窄になっていると、「常識」つまり健全な判断からかなり遠ざかってしまいますよね]
・常日頃から、物事を実行する場合には最悪の事態を想定しなければならないなと感じた。 [その通り]
・深読みしてしまった。 [う〜ん、どういう意味でしょう]
・正確な判断は難しい。 [その通りなのですが。現実の場面では、限られた時間、限られた情報、限られた手段、限られたリソースの中で判断する必要があります]
・先生の話し方が早すぎて[この場合は「速すぎて/速過ぎて」]聞きとれなかった。 [すみません。自分でもちょっと早口だなと思っていました。ホントにゴメンなさい。次回は改善します]
・打ち上げておいてなに[何]を言っているんだと思った。 [でもね、その時は、追いつめられて正常な判断ができなくなっているんです]
・[打ち上げ?/原因究明?]体勢などの見直しは大切だと思った。 [......まぁ、確かに]
・大きな計画ほど責任とかの圧力が強くなり正しい判断ができなくなるシステムが良くないと思った。 [素晴らしい。まったくその通りです。最近の話題なら豊洲市場への移転なんかは、その見本ですよね]
・追いつめ[詰め]られたら[正常な/適切な]判断つかなくなるので、冷静になって考えるのが大切だと思った。
・追いつめ[詰め]られた状況は怖いと思った。
・追い詰められると、正常な判断が出来なくなるというのがよく分かる例だった。 [以上、教室内の話を踏まえると、その状況が良く分かっていただけたんじゃないかと思います]
・板挟みの状態での判断は難しいと思った。そこで正しい判断ができるようにしたい。 [そうですよね。この件に関しては次回ご説明します]
・班での話し合いが欲しかった。 [そんな感じでしたね。次回はできるだけそのようにします。お約束です]
・物事のとらえ[捉え]方1つで大きく見方が変わる。 [まったくその通り。状況を客観視して、一つ上にレベルに立って「問いの立て方の次元を一つ上げる」と物事の見え方は一変します]
・眠気を抑えて聴構充分[正しくは「聴講十分/充分」。ただし適切な語ではありません]な睡眠を取らなければ。大規模な組織の運営は必ずこのような失敗をするものですね(東京電力、シンドラー)。 [後半は、ある意味その通り。ポイントはむしろ、「そうならないためには」じゃないでしょうか]
・問題があったのに、思ったより大丈夫だと考えたその認識の甘さが致命的だったと思った。 [確かに。でも、仰る通りですがそれって、「物事をきちんと認識できる能力がない」ということでは?]
・問題があると大事故に発展するので、利益だけを求めてはいけないと考えた。 [その通りですが、採算性──これが満たされないと、企業は倒産してしまいます──その他とのバランスは?]
・問題点をズラす大人の闇を見た。 [まったくその通り。酷いですよね。でも、気をつけていないと、新人の貴方/貴女がこの泥をかぶせられてしまいますよ。だからやっぱり、ちゃんと勉強しなくちゃいけないんです]
・優先すべきものが、間違っていた。組織全体で、正常な判断ができなくなっていっていた。
・利害は、ここまで、正常な判断力をにぶらせ[鈍らせ]ることを知った。 [以上、まったくその通り。ツボをご理解していただけたと思います。それは評価しますが、問題はこ「じゃぁ、具体的にどう行動するか」でう。これからの講義で一緒に考えましょう]
・立場の高い人が優先されるのだということが分かった。 [そうなんです。じゃぁ、そうでない貴方/貴女はどうします?]
・倫理の授業でサーキットの話を取り扱ったが、生半可な気持ちで臨んではいけないと感じた。 [その通りです。ご理解していただけて嬉しいです。機械系の話題が続いているのでバイオ系の皆さんには申し訳ないと思っています。ただし、例えば「誤差」を「生成上の不純物」に、「自動車」を「市販の食品」に置き換えてもらうと、実はかなり共通する部分があることに気づかれるのではないでしょうか]


西村が担当する授業の様子は、<http://www.page.sannet.ne.jp/h_nishi/>で公開しています。できるだけ、授業当日に更新するように心がけています。


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