2020年5月21日更新。2020年5月26日加筆更新

プロフェッショナルとしての倫理と行動設計A(第4回:2020年5月20日)

課題6:大阪府立大大学院生論文捏造事件に関するレスポンスシート(暫定回答)


0.自分が所属する研究室でこのような事件が起こる可能性はあると思いますか。

ある:3名

・可能性はある
・他人である他の研究室の人間がどのようにして研究をおこなっているかわからないため

ない・可能性は低い:5名

・自分の研究室も、教授の専門分野以外の研究テーマが多い(外部企業との共同研究が盛んである)。さらに、教授は県外への出張が多く、実験にはほとんど立ち会わないため、実験時の不正などは実質可能な環境ではある。しかし、教授も詳しくない分野であるぶん、文献調査や実験の方法・結果を写真や参考文献を全て提出・確認するための進捗報告を定期的(1〜2週間に一度)に行い、かなり詳細までチェックする。そのため、学生側からは報告結果の不正・捏造はしにくい。また、学生同士では研究内容は互いに詳細まで理解していないが、実験を手伝う機会が多く、不正はしづらい。1つの研究テーマにつき研究班をつくり、現状友好関係も良好である。以上から、教授だけでなく学生間でも内容確認をする機会が多いため、不正や捏造をすることは難しく、捏造・不正事件が起こる可能性は低いと考えられる。
・サンプルデータの管理が整っているため紛失しにくい環境だから
・ないとは言い切れない。
・この事件のようなことは起きないと思う。
・可能性はあるが、限りなく低いと考えられる。

無回答:2名


1.当該大学院生は、何故、データを捏造したのでしょうか。あなたが考える理由を列記しなさい

・データを捏造する発端となったのは製作した実験用サンプルを紛失し、すぐに同じサンプルを製作することが困難であったことが考えられる。当該研究室においては、学生各々が別々の研究課題を持ち、通常の実験及びデータの収集は学生が単独で行っていたことから、当該大学院生がサンプルを紛失したタイミングでも単独であったため、すぐに相談できる相手がおらず、焦っていた結果、紛失した事実を教員に報告せずに隠したと考えられた。そのため、当該大学院生のみがサンプルを紛失したことを知っており、次の段階の実験において当該サンプルが必要であった事から、他の人にバレないようにするためにデータを捏造し、良い研究結果に偽ったと考えられる。2回目のデータの捏造では、既にデータを捏造していたことから、データ捏造に対する考えが甘くなっていることから行なったと考えられた。
・教授からの評価のため。紛失したサンプルをもう一度制作するのは不可能であり、紛失前の実験データはあることから、このまま捏造してでも研究を進めたほうが都合がよいから。「よい結果」を求めていたからであり、その求めていた理由の1つは就職活動に使える奨励賞受賞の事実。
・研究で実績を残し、よい就職先に入るためのアピールポイントを作りたかったためだと考えられる。一度捏造を始めてしまえば、数珠繋ぎに捏造の研究データを作成してしまい、また教授からの評価も高かったため、やめるにやめられなかったのだと考えられる。また、教授からの信頼が厚く簡単には捏造がバレないと高を括っていたため、安易に捏造に手を出してしまったのだと考えられる。また、学部時代にアルバイトに明け暮れていたことを鑑みるに、研究時間を少なくしてアルバイトに時間を充てるつもりであったのかもしれない。楽をしてよい就職先を手に入れたいという欲望もあったのかもしれない。
・就活のために明確な研究成果研究成果が欲しかった.教授からの評価を得たかった.講演会の奨励賞奨励賞に申請を行う通例がプレッシャーとなっていた.サンプルの紛失の件について相談する期を逃したことで,ねつ造しか自己解決自己解決する方法がなかった.
・就職をするときに査読論文による実績があると有利になるため。教授に対していい顔をしたかったため。サンプルを紛失し研究発表、奨励賞に申し込むまでに時間がないため。二回目の捏造は、一回捏造をしたことによって捏造を行うことへのハードルが下がっていた。また、引くに引けない状況にもなっていた。奨励賞の申請や記念講演などの通例にとらわれてしまっていた。教授などに信頼されているためばれないと思っていた。実際に指導教員に確認されていないためばれないと思っていた。
・調査報告書から、まず当該学生は学部在籍時の成績では良い就職先をのぞめないとして、大学院に進学した。さらに、良い研究成果が良い就職につながると考えていた。その結果、研究者としての倫理観や、研究成果をあげる過程で得られる自己成長よりも、成果主義をとってしまった。そのため、よい成果をあげることを何よりの目的とし、捏造を行ったと考えられる。
・当該大学院生にとって重要だったことは、進学した理由から、卒業後に良い就職を行うことであったと考えられる。そのため、研究に対しての意識は低く、不正をしてでも研究をスムーズに進めることに抵抗が少なかったため、ねつ造に至ったと考える
・当事者の主張のあるように良い研究結果を出すことが就職につながると思ったというのが捏造に繋がった理由だと考える。論文発表の期限や就職活動の期限など時間が限られた中で成果を出そうとしたため捏造につながったと考える。
・良い会社に就職するために、実績となる論文誌への掲載を強く思っていたからと考えられる。これは学部時に、就職活動で苦戦したことで、より就職に対しての気持ちは強かったと思う。さらに、ねつ造が行われた時期を考えると論文の締切りに追われていたというプレッシャーもねつ造に至った理由の1つであったのではないかと思う。


2.当該研究室が組織として持っていた問題と考えられる点を列記しなさい

・「学生の自主性を重んじる研究体制」とあったが、この傾向が過度になりすぎている点が問題だと感じた。それによる、情報の共有の確認ができなくなる可能性がある。教員一人あたりの学生数が多い点。教授の生徒の研究結果(現物)に対する最終確認が行われていない点。
・1人1人で実験、他の学生との関わりが少ない。先輩から後輩に操作方法などを教えていたとあるが、学生主体であるがゆえに間違って伝えられることも考えられる。実験を行う上で、教授との関わりがあまりなければ、好き勝手なことをしようと思ってしまう人がいてもおかしくない。当該学生のように、捏造のために関連する論文をかなり読んだと言うように、自主性が求められるがゆえに、間違った方向に自主性が向いている。
・学生各々が別々の研究課題を持っていたため、指導教員のチェックが細部まで行き届いておらず、論文の捏造発覚が遅れてしまった。このため、教員のチェック体制の甘さが問題であると考えられる。また、学生が自主的に研究を行うことを重んじる研究室であったために、十分に研究を行っているだろうという指導教員の意識の甘さも問題であると思う。データの取得方法など、実験に関して指導教員が込み入った話し合いをしてこなかったことも、捏造を許してしまった原因であると思う。指導教員が実験は本当に行われているのか、データをノートに記入してあるかなどを確認せずに、論文提出を許してしまったことに問題があると感じる・学生によって自主的に研究を行う体制のため、教授や助手が実験の内容を把握しきれない点。大学院に入学した直後に不正をしていることから、学生への研究倫理に関する教育が十分になされていない可能性があると考えられる。
・教員2名に対して約20名の学生の指導を行っておっており,監督が行き届いてなかった.研究室の設備の状態を共有できていない.論文を投稿する際に統括責任者の教授,筆頭執者の助手の両名が論文のデータについて詳細に確認していない.サンプルサンプルの紛失などの問題を気軽に相談できる人間関係や雰囲気,仕組みがなかった
・教授の人数に対し生徒の数が多く、教員が実験に立ち会う機会が少ないにも関わらず、別々の研究課題が与えられていることから組織として倫理に基づいたタスク処理が完璧にできない状況であったと考えられる。
・研究室に所属する学生一人一人の科学技術に対する倫理観のレベルが低い。倫理に対する活動を行っていなかったのではないか。捏造を複数回行えてしまう環境。教授、助手が学生の研究について理解できていないこと。研究を学生それぞれが単独で行っていたこと。自主性を重んじる方向性ならそれなりの対処を行うべきだったこと。研究室あたりに教員2人、学生20名は適切なのか
・指導責任者である教授あたりの学生数が多い:週5日勤務で1日8時間労働とすると週40時間、教授が勤務できるとする。研究室所属学生20人に対し、週2時間研究活動を進捗する時間を設けたとすると、十分であるようにも感じる。しかしこの計算では教授の全ての労働時間を学生の監督時間に回した想定であり、実際には講義を受け持っていたり、出張があったり、教授自身も研究活動・論文執筆をする時間が必要である。よって、教授が全ての学生をカバーできる人数を超過しており、監督不行き届きになりやすい環境であった。・計測装置の操作方法や学生の手に依存しすぎている:計測装置の操作方法は学生同士で教えられる、というのは私の研究室でもよく見られることであり、珍しくない。実験に立ち会わない教授が代替わりする学生たちに毎年操作方法を教えるよりも、よく使用していた学生が教える方が現実的だからだ。しかし学生同士ではやはり完璧に教えあうことには限界がある。そのため、学生が操作方法のマニュアルを作成し、直接教授が学生に操作方法を教えるのと同程度の内容であると教授が確認したものを用いて、代々操作方法を教えあうべきである。
・実験用サンプルの管理が甘かったこと。実験用サンプルを雑に扱える環境が問題であったと考えられる。通常の実験及びデータの収集は学生が単独で行なっていたこと。学生の自主性を重んじる研究体制かつ精査が十分に行われていない環境がデータを捏造しやすくしていたと考えられる。


3.この問題に対する大阪府立大学側の対応は適切であったと考えられますか。理由を明記して、各自の意見を書きなさい

・「(3)本委員会としての提言」にもあるように、事件の発覚、公表・謝罪まで研究室内で行うことができたことは自浄作用があることを示しており、かなり適切であると考えられる。またかなり直前ではあるが、学生が修了する前に事件発覚がなされたことも評価すべき点である。しかし、教授当たりの学生数や、意味をなしていなかった倫理教育など、根本として捏造が起きるような環境を作っていたのは大学側である。また、捏造をしてから発見までは1年以上経過している点も、評価することはできない。
・大阪府立大学側の対応は適切であったと考えられる。本学生が行った行為はそもそも研究にすらなっておらず、ほかの論文からもっともらしく見えるデータを引用して作成されたものである。論文とは研究を行った結果についてまとめるものであるため、論文の取り下げや停学措置は妥当であると感じた。また、指導教員にも処分が下っているが、生徒を指導する立場の人間であるため、これも適切な対応であったと思う。また、捏造によって社会的な不信感を与えてしまった事や大学の名前に泥を塗ってしまった事からも、処分は適当であったと感じる。
・大学の研究室側の対応は,主に二つの理由から迅速かつ適切な対応であった.一つ目の理由は,発表会で話題にあがった実験装置の確認と生データの確認,その生データの分析を当日中に行ったからである.発表会でどの程度の話題の大きさだったかは想像できないが,その当日中に前述の確認作業を行った迅速性は大きく評価できる.二つ目の理由は,発表会の翌日に当該学生に連絡を取ろうと試みた後,実験ノートの検証と再計測を行ったからである.不正の疑惑を曖昧にせず,解明しようとする姿勢が見られる.これら二つの理由から,当該研究室当該研究室は研究不正に対する問題意識を有しており,不正の疑惑を真摯に解明しようとしていることが認められ,迅速かつ適切な対応であった.大学としての対応も前述の研究室の対応同様対応同様に迅速かつ適切であった.なぜなら,当該学生は修了を控えた修士二年生であり,その対応は修了の合否に直接的に関わってくる.仮に対応を曖昧にして修了判定を合格とした場合,当該学生当該学生を再教育再教育する機会を失ってしまう.しかしながら,迅速に対応したことで,教育機関教育機関として再教育の機会を得られた.以上のことから,大学側の対応は概ね適切であった.その一方で,発表会発表会で話題にあがった当日中にデータの確認ができ,実験ノートを見るだけでデータの捏造を裏付けられることができるケースであったことを考慮すると,論文を発表する前にそれらの確認を行うことで未然に防ぐことが十分にできた.その点については,改善の余地が大いにある.
・通常は行わないデジタルノイズの解析や実験ノートの確認など、本当にデータの捏造が行なわれていたのか、事実関係をはっきりさせている対応は適切であると考えた。
・適切(当然)だと考える。役職の辞任、論文の取り下げ、研究費の取り下げなどは当然の措置だと思うから。一度ばれてしまった以上、嘘に嘘を重ねるより正直に公表・謝罪したほうが印象もよいからという考えのもとなのか、それとも、社会の信用を失ってしまって申し訳ない、できる限りのことはする、といった感じなのかは分からない。
・適切であったと考える。理由は、不正の発覚後すぐさま会見を行い、公に発表し、組織の透明性を維持したからである。また、教育方針の見直しなど、体制から見直すような、具体的な対策案を提案しているためである。
・適切であったと思う。生徒に対する修士論文及び最終試験の不合格、奨励制度の取消、そして研究室が受けていた研究資金等の取り下げは適切な処置だと思う。また、委員会委員に当該大学内だけでなく他機関の人を選出している点も適切であると思う。さらに、ねつ造の発覚から記者発表、関係者への謝罪を迅速に行ったこと。
・不正が行われた状況を把握し報告していることや、研究費や論文記載の取り下げなど学外の機関に影響に対して尽力し、社会への影響を極力軽減しようとする対応は適切であったと考える
・問題が起きてから発表、謝罪まで早かったことは適切だと考えられる。迅速に発表、謝罪したのはいいが、一度しか面談を行っておらず実態をつかんでいたのかが疑問であった。指導教員が問題を発覚したのは、外部への体裁的にはよかった。調査委員会の人間が内部の人間ばかりなのが疑問に思う。内部関係者で是正をしたとあるが、もしこれ以外にも多くの問題が見つかったとして隠蔽されてもわからない。むしろ第三者的な立場の人間が調査をしたほうが良かったのではないかと思う。学生からの謝罪があってもいいのではないかと思う。(文や会見など)


西村が担当する授業の様子は、<nishimura-sensei.net>で公開しています。できるだけ、授業当日に更新するように心がけています。


「授業に関するご連絡」に戻る

トップページに戻る