2011年11月3日更新(2011年12月11日ページ移動。2015年2月11日一部写真削除)
■12月3日(土) 学会は、東日本大震災の被災地と「本当に」向き合っているのだろうか
というわけでセンセイは、今日から京都大学で開かれている科学技術社会論学会の大会に参加しています。この学会、センセイは前身となる団体を含めて、創設時から参加してます。
それだけではありません。設立間もない2004年に金沢工大でも大会を開催したほど。だから本来ならばもっと積極的に参加すべきなのでしょうが、どうもここ数年は何となく身を引きがち。
ぼんやりとその理由を考えていたのですが、少し思い当たる節があります。その名の通り、科学技術と社会との関係を考えるこの学会、設立当初は企業に所属する人や、企業出身の大学教師など、所属も、志向も多様な人たちが参集していました。
良くも悪くも「ここで何かをできそうだ」と感じた人たちのエネルギーに溢れていたのです。「雑多」ともいえるこの状況は、数年で、潮が引くように変化しました。急に、均一な参加者ばかりになっていったのです。残ったのは大学の先生と、それを目指す若手ばかり。
この過程で、実際の社会が持つ「現場」感覚がどんどん失われていったように思われます。うらやましいほど頭がいい――というより、当の本人がまずそう信じ切っている――し、議論はうまくて論敵を打ち負かすんだけど、滑らかに繰り出されるその言葉には、どこか「重さ」がない。
さて今年の大会、今回の中心テーマはやはり東日本大震災。学会としてそれまでに何をすべきだったのか。何はできて、何ができなかったのか。そして、現在進行中の事態を踏まえつつ、これから何をしなければならないのか。
活発な議論が行われました。写真はその一場面。センセイは前の席に座ったので空席が目立ちますが、実際には立ち見客が出るほど白熱した状況。
しかし、です。センセイには、現地で苦労しながら、あるいはそんな中でも喜びや希望を実感しながら生きている人たちの、「重さ」と希望を感じられる人と、そうでない人とに峻別(しゅんべつ)されてしまうように思えるのです。
現場に赴いたか否か――センセイ自身は大震災後には被災した地域を訪れていない――にかかわらず。センセイとしては、自身が何回か大地震を経験していることと、昨年、一昨年と、その後被災地になる場所を巡ったことによる偏見だ、と思いたいのですが。
土曜日だということもあってか、市内には観光客が溢れていました。雨がちだったので、紅葉は良くわかりませんでしたが、京都大学前の銀杏(いちょう)は見事な色。バスの乗客が、思わずため息をついたほどです。
ホテルへ戻るバスは渋滞に巻き込まれてなかなか進みません。車窓から見える厚手で暖かそうなジャンパーを着た観光客の表情は、今年まるで、何事もなかったかのよう。
もちろん誰にとっても、とにかく日常生活を送ることこそ最優先ですから、それを責める気はないのです。この違和感、同じ関西圏でも、例えば阪神淡路大震災やJR尼崎線事故などを「経験」された方は、きっとわかってもらえるんじゃないかと思います。
■12月2日(金) 「これでサッポロさえあれば...。」 ――西村センセイ、お上りさんになる――
午前中の講義を終えた西村センセイ、研究室へ戻ると、授業を手伝ってくださる学生さんと打ち合わせをし、荷物を片付けながら相談に来た大学院生を指導。
これから電車に乗る必要があるのです。仕事に区切りをつけて階下に降りると、あ”......。さっきの講義の受講生のために、講義で使用したスライドをPDF化し、教材配信用のサーバーにアップロードする必要があったんだ。
急いで部屋に戻り、ドアノブに鍵を差し込んだまま作業。コートを脱ぐ時間がなかったので汗をかき始めていますが、今は時間が最優先。やはり気が急(せ)いていたようで設定を誤り、ファイルの転送に失敗しましたが何とか作業完了。
今度こそキャンパスを後にします。富山始発の特急サンダーバードはすでに金沢駅に入線していましたが、ぎりぎりのタイミングで乗車することができました。
急いで買ったお弁当を食べ終えるとうとうとしてしまいました。気づくともう左手には琵琶湖。京都駅到着後はすぐに地下鉄に乗り換えてホテルへ。周囲はもう暗くなっています。
今日のセンセイは京へ「上った」わけですから、「お上りさん」。ご存じない方もいらっしゃるようですが、新潟県は大きく、北から下越(かえつ)、中越、上越と地域が区分されます。
この「上中下」は現代的な南北ではなく、京の都に対してなんですね。京を基準にして、越前(福井県)、越中(富山県)、越後(新潟県)と呼ぶのと同じ理屈です。
今日は誰とも会う予定がないので西村センセイ、お上りさんにふさわしく(?)、大丸京都店――写真左奥――の地下でおいしいものを買ってホテルへ戻ることにします。
これで「サッポロ」さえあればなぁ。サッポロビール、関西では人気がないので、入手が難しいのです。
■12月1日(木) 本格的な降雪を前に、柏崎駅構内では大型投排雪保守車が試運転をしていました
週末の出張が続いているので、昨日の最終列車で自宅に戻り、今日は休暇を頂きました。朝から親戚を数軒回り、実家に寄り、新潟市内での所用を済ませます。
でも明日朝には講義があるので、午後には電車で金沢へ移動。外出を除いた自宅滞在は約9時間。今日の新潟は、雨がちだったこともあるのかとにかく寒くて、車外気温計が5.5℃を越えることはありませんでした。
柏崎駅に到着すると、ディーゼルカー独特の大きな音が聞こえてきました。何だろうとホームに出てみると、青色の大きなラッセル車に何人もの人が乗って、構内を行ったり来たり試運転をしているところ。
写真では雲に溶け込んでぼんやりとしか見えませんが、写真中央奥にそびえる地域のシンボル米山(よねやま)はすでに真っ白。
本格的な降雪を前に最終的なチェックをしているんでしょうね。最近、北陸地方の電車に乗っていると、試運転中や留置中のラッセル車を見かけることがあります。
でも、それら除雪車両の色は、目立つ赤。2002年に会社更生法を申請し、その後解散した新潟鐵工所を引き継いで設立された新潟トランシスが開発したこの“ENR-1000”。
1台でラッセルおよびロータリー機能の両方を備えた優れものなのですが、実は、正式な鉄道車両ではなく、「投排雪保守車」という除雪機械なんですね。
大きさこそ異なるものの、同じこの場所で見た小型除雪機械と同じ扱い。そのため、除雪のためにはその地域の鉄道をすべて止め、しかもすべての踏切に人員を配置(!!)した上で作業する必要があります。コストの問題が一番なんでしょうが、鉄道が雪に弱くなっている事情がわかります。
今年の冬はどうなるんだろう。さて今日から師走。そして大学生の就職活動も解禁されました。
先日の講義の中で、学生諸君に檄(げき)を飛ばしたのですが、初日の出来はどうだったのでしょうか。
■11月30日(水) 北陸鉄道の最新型路線バスは、ドライブレコーダーを装備していました
今日は見たままのお話。都内に一泊した月曜日、新幹線と特急を乗り継ぎいでセンセイが金沢駅へ到着したのはちょうど正午。
駅前から路線バスに乗り、出勤するのですが、午後の講義にはまだ時間があります。ロータリー、センセイの目の前にはまさ金沢工大行きのバスが発車時刻を待っているのですが、ここはひとまず見送り。
アパートに立ち寄って、荷物を降ろすことにします。センセイが借りているアパートは、バスの便の良いところにあります。結果的には幸運でした。
この日もすぐにバスが到着。他の座席よりちょっと幅が広く、荷物を置くにも、降りる時も便利なので、一番前の座席に座ります。車内を見渡すとずいぶんピカピカ。
導入したばかりの車両のようです。行き先や運賃の表示はご覧のように、最新型の大型液晶ディスプレイを用いていて......あれ?!
「ドライブレコーダ装着車」。最初は何のことかわからなかったのですが、ほどなくそれが、ルームミラーの上にある小さな機器を指していることを理解しました。
これはビデオカメラ。万一、交通事故が起きた時、事実関係はどうだったのか、客観的な証拠を残すために、ここから撮影した運転の様子をすべて、ICメモリに記録しているんですね。
もちろんバスの運転手さんの多くは安全運転。でも、いつ事故に巻き込まれるとも限りません。それに、バスは市内をぐるぐる走っているので、もしかすると他の交通事故をこのカメラが「目撃」することもあるかもしれませんね。
どこかで乗車したタクシーにはこの装置が装備されていましたが、路線バスでは初めて見ました。
■11月29日(火) 山形で、久しぶりに入ったラーメン屋さん、とても美味しかっただけでなく...
山形の話題を、もう一晩だけ。
センセイが参加する学会は通常、土日に開かれます。今回はともかく、たいていは大学を会場とするので、土曜日は学食を利用できます。でも日曜日は閉店。
というわけで、日曜日だけお弁当を用意することが多いのです。今回もお弁当の予約を受け付けていたのですが、会場は市の中心部。きっと美味しいお店もたくさんあるだろうと思って、申し込まずにおきました。
会場へ到着すると、資料の中には付近の飲食店を紹介した図が入っています。でも西村センセイ、ハンバーガーやイタ飯は食べないし、近くの蕎麦屋さんは混んでいるし。
というわけで、市内を少々放浪。天気の良い日曜日、そして市の中心部だというのに、街を歩いているのは女子高校生がほとんど。
それも決して多くはありません。近くのビルの中で模擬試験を受けているのか受験勉強をしているのか、真面目そうな生徒ばかりです。
彼女たちの印象は決して悪くないのですが、このままではお昼ご飯が......と思っていたら、写真のラーメン屋さんに出くわしました。ちょっと覗いてみると、お客はまばら。久しぶりにラーメンを食べることにしました。
勝手がわからないので係の方にお勧めを尋ねると、店内に貼られた掲示を指差して説明を始めて下さりました。「絆・今昔鶏中華物語 海老ワンタン入り」(600円)という名のそのラーメン、醤油味──他のメニューは豚骨味だった──だし、あっさりしている感じだったので、お願いします。
掲示の隣には新聞記事も貼られています。読んでみると、新庄市に本拠地を置く「新旬屋麺」のこのラーメン、今夏、「第3回 最強の次世代ラーメン決定戦!」で見事全国第1位に選ばれたんだそうです。
これってちょうど、金沢工大で開かれた学会に参加して、近くの「ラーメン 一鶴」に出くわしたようなもの。程なく届いたのが写真のラーメン。とても良い香りがします。
スープは澄んでいて僅かに油が浮かんでいます。どうしても海苔に目が行きますがそこには「絆 震災復興 前向きに行こうぜ!」と書かれています。
どうやって書いたんだろう。単なるラーメンではなく、大震災からの復興を願い、東北地方の食材をふんだんに使用したラーメンなのです。
小麦は山形と福島、鶏肉と卵は岩手、海苔は宮城といった具合。スープを頂いた最初の印象は「深く、甘い」。鶏ガラ主体の上品な味です。
ストレートに少し縮れが入った麺はというと、ザラザラ感は全くなく、きめ細か。メンマも上品です。コリコリしたものがあったので何だろうと思ったら、鶏の軟骨部分か何か──たぶん──がスライスされて入っているんですね。
個人的には、いらないかな。(実際、食べ残したし)店員さんのお薦めだったので、ワンタン入りをお願いしたのですが、入っていない方(500円)が味がストレートに伝わってくると思います。まったくの偶然ですが、久しぶりに美味しいラーメンを食べました。
最後にお知らせを。この「絆・今昔鶏中華物語」、来年1月にカップ麺として販売されるんだそうです。金沢で手に入るかどうかはわかりませんが、店頭で見つけたらぜひ食べてみたいと思っています。
■11月28日(月) 鉄路と鉄路、このように交差します ──JR信越本線と羽越本線──
昨日の続きをちょっとだけ。写真は少し前に、自宅から電車で新潟へ向かう時に撮影したもの。
新潟の何駅か前に新津(にいつ)駅という鉄道の要衝──現在はJR東日本の電車工場も付設──があるのですが、その駅を出発してすぐのところで右側(東側)を見ています。
線路が見事にX字形で交差していますが、相対的に横になっているのが信越本線の上り線(左が新潟、右が新津)、右手前から左奥に伸びているのが羽越本線です。この付近の信越本線は複線、羽越本線は単線。
紙の上で図を描くとわかりますが、複線と複線、あるいは複線と単線が分かれる場合、基本的にはどこかで写真のような交差が起きるのです(ポイントを重ねる方法もないわけではない)。
センセイが知っている限り、例えば高崎駅の信越本線と上越線はかつて、このように交差していました。
ただしこの方法では列車がその区間に入っている場合、他の本線を塞いでしまうため、列車本数を増やすことができません。
だから輸送量の多い路線には不向き。新幹線が開通するまでは信越・上越線は目一杯運行していたので、高崎駅もその後、立体交差化されました。
というわけで実は、このような線路の交差は意外に珍しい光景なのです。今回訪れた奥羽本線と仙山線の場合はさらに複雑。一昨年に東北地方を旅した際に撮影したこちらの2枚目の写真のように、山形駅の二つ隣の駅で、幅の違う線路が交差しています。
写真の新津駅の場合、信越本線は運行本数が多いものの、羽越本線は貨物輸送が主体で本数が少ないため、平面で交差しても問題ないんだと思います。
山形駅の場合も新幹線、仙山線ともに輸送量はあまり多くないと思われます。線路の使い方一つを見ても、その地域の実情が伝わってきます。
■11月27日(日) 西村センセイ、国内ならどこでも鉄分を補給可能!?
学会2日目の西村センセイ、夕方の最後のプログラムまでお付き合い。
明日は午後から講義があるので、それまでには金沢へ移動する必要があるのですが、残念ながらもう、公共交通機関で今日中に金沢へ到達することはできません。(自家用車で高速道を飛ばすなどの方法は除く)
山形に宿泊しても新幹線を乗り継げばぎりぎりで間に合うのですが、余裕を見て今日は都内に宿泊。ここからなら明朝8時ころに出発すれば余裕で金沢へ移動できるのです。
ちなみに、会場で出会った前任校の元同僚は、センセイが山形に来る時に利用した米坂線の快速「べにばな」――「快速」と言っても事実上は各駅停車――で新潟へ戻るとのこと。
「べにばな」の新潟駅到着は21:20。ご苦労様です。さて写真は今朝、山形駅の西側にあるホテルから、市内中心部(駅東側)の会場へ移動する途中に、JR線をまたぐ陸橋の上から南側撮影したもの。
写真中央奥が山形駅でです。手前、つまり北側に3本の線路が延びていますが、この3本、左側は線路の幅が広く、右側2本は狭くなっています。
違いがわかりますでしょうか。左は山形新幹線で、右側は在来の奥羽本線なのですね。
山形新幹線は、他の主要な新幹線と異なり、まったくの新設ではなく在来の奥羽本線を改良して敷設されています。
福島−米沢−山形間はそれでよかったのですが、山形以北は山形と仙台を結ぶ在来の仙山線、そして左沢〔あてらざわ〕線を考慮する必要があります。
そこで一部は新幹線用の広軌(左側)に改め、他は狭軌(右側)のまま残すという方法が採られました。ただしこれでも問題は残ります。仙台への仙山線は、どこかで東側(写真の左側)へ向かう必要があります。つまりどこかで左側の広軌をまたぐ必要があります。
単なるレールの交差ではなく、幅の違う線路が交差することになります。そこはどこで、どうやって交差しているのか......というわけで、日本国内なら――場合によっては外国でも――どこでも鉄分を補給できる、便利な西村センセイなのでした。
考えようによっては、ずいぶん安上がりな趣味かも。