2024年3月16更新(2024年3月24日ページ移動)
■3月16日(土) 「傾いている」木造アパートは解体され、更地になっていた ──液状化現象の恐怖──
まず、1枚目の写真をご覧下さい。(拡大写真(別ウィンドウ、1280×960))
もちろん新潟市西区、能登半島地震による被害が大きかった地区で撮影しています。どこかおかしな点に気づかれたでしょうか...。
考えている間に、砂丘の斜面を降りて平らな地区に出たセンセイの行動のご報告を。地震発生直後に連絡があった通り、娘夫婦が借りているマンションの被害は軽微。1階全体が駐車場になっているのですが、そこと道路の間に数cmの段差ができた程度。
その段差もひとまず埋められていました。ところがマンションの斜向かい、「傾いている」白い木造アパートは、すでに解体撤去されて、更地になっていました。こちらはちょっと、予想外。
跡地をよく見ると、地盤沈下が起きており、しかも低い方(南側)に向かって沈み方が大きい。(約30cm)持ち家なら自分の財産なので修復するか建て直すか、悩ましいところ──修復の可否や資金が大きく関係する──ですが、賃貸家屋の場合は割り切るしかないのですね。
その隣のお宅はというと、建物そのものは大きく傾いているわけではないようです。ただし高いブロック塀が、アパート側にかなり傾いていました。もしかすると塀は、アパートの建物に倒れかかっていたのかも。
本来の用を済ませて、少し離れた小針駅へ向かいます。その途中で撮影した1枚目の写真の「謎」、おわかりになりましたでしょうか。実は左側の電柱が大きく──たぶん1m弱──沈み込んでいるのです。
もちろん、地震による液状化現象でもたらされたもの。周囲はアスファルトで仮に補修された後、清掃されているので一瞥(いちべつ)しただけではわかりません。しかもこの写真は縮小しているし。
でも、中央奥の電柱と比べると、注意喚起用の黄色と黒のストライプの帯の位置がかなり異なることがわかります。もちろん帯の高さが完全に同一とは限りませんが、歩行者用信号機のボタンの位置などを考えると大きく沈み込んでいるのは確実。
付近の電柱がどんどん沈んでいく様子が、監視カメラに記録されています。早送りでは...と思えるほどの速度です。一部繰り返しになりますが、この被害をもたらしたのが液状化現象(2枚目の写真)。個人的には、ここまで明瞭な痕跡を目にしたのは初めてです。(拡大写真(別ウィンドウ、1280×960))
それはともかく、右側のフェンス付近から泥水が噴出。フェンスは基部ごと右側に傾斜しています。地震発生からすでに2ヶ月半が経過。1枚目の写真のように、痕跡はちょっと見ただけではわからなくなっていることが多くなっています。
誰もこの場所を片付けたり、清掃しようとしたりしないのでしょうか。ちなみに写真に入っている建物、よぉーく見ると、どれがちゃんと水平なのか、わからなくなってきます。で、この液状化がもたらすのは、基礎がない地盤の沈下。
写真は、さんざんお世話になった新潟西郵便局の東側。(拡大写真(別ウィンドウ、1280×960))西郵便局には東西に駐車場がある(この東側奥は、業務用)のですが、西側では液状化で多くの車が水没(!!)しました。たぶん全車、廃車。
ただしこの東側の駐車場の様子は報道されていなかったのです。で、現場はというと、ご覧のように見事に地盤沈下。
局舎は沈下しておらず、かつ、引き続き水平を保ったまま──実は、少し怪しい──だとすると、駐車場だけでなく手前の道路(旧国道116号線)を含めて、周囲が全体的に50cm程度沈下していることになります。
要するに、地域全体が沈下しているのです。しかも実際には、昨日お伝えした側方流動も起きているはず。加えて、今回の相手は機械や電気などではなく現実の複雑な地盤と、個別の特性を有する建物など。
だから、実際には...。(明日の最終回(たぶん)へ続く)
■3月15日(金) 斜面は各所で割れた上に、全体が滑り落ちて... ──新潟市の被災地を歩きました──
今朝、夏用タイヤを積み込むと、隣の長岡市へ車を走らせました。
もちろんタイヤ交換のためですが単純な交換ではなく、以前お伝えしたように夏用を新品に履き替えてもらうためです。履き替え作業に加えて、「ホイールバランス」を取る作業などに時間がかかります。
そこで今日の朝イチに車とタイヤを預けて明日の午後、受け取ることに。貸し出し可能な代車──多くの場合、新製品のアピールも兼ねている──はすべてAT車なので、センセイは運転不可。そこで今日、明日ともに、ディーラーから長岡駅までの約4kmを歩きます。
ちなみに今日の総歩数は、以下の事情もあって16,997歩。単純に自宅─長岡駅間を往復しても面白くないので、以前ご紹介した企画乗車券(センセイはさらに割引)を使って、県内のJR線に乗車することに。同時に、今日は新潟市西部(「西区」)に住む娘夫婦のマンションを訪れます。
乗り鉄的にもセンセイ、実は、娘達のマンションがある地域を含む、JR越後線の白山駅─吉田駅間を十数年乗車していないし。そして何より、娘夫婦のマンションがある場所は、元日の能登半島地震で大規模な液状化現象が発生した、まさにその場所なのです。長岡駅から各駅停車で新潟駅へ。本当に久しぶりの越後線──センセイは浪人生時代から計15年お世話になった──に乗車して、最寄りの寺尾駅で下車。
今日の下越地方(新潟市を含む新潟県の北東部)は、西風がとても強い。羽越本線で一部運休が発生したほどです。
本来の経路は、寺尾駅からマンション往復。ただし本数が少ない吉田以南の列車との時間がうまく合わないし、今日の強風を考慮した方が賢明。というわけで本来の用を済ませたら、追い風を受けつつ東隣の小針駅へ歩くつもり。
所要時間はざっと40分。前任校時代にパンフレットの撮影を行った寺尾駅。1995年の阪神淡路大震災の発生も、この駅で知りました。駅は東西に延びる砂丘の頂上付近。(実際はそのちょっと南側)
マンションへの最短経路は南東の、歩行者専用の階段。ただし今回の地震で、階段は完全に崩落(少し距離があったので撮影はしていません)。そこで西側に遠回りして、マンションを目指します。
砂丘を下る(=南進)時、右側に見えてくるのは教育実習を経験させていただいた坂井輪中学校。残念ながら地震で大きな被害を受け、他校を借りて授業を行っています。遠くから見ただけですが、あちこちに立ち入り禁止のカラーコーンが立てられていました。
砂丘の斜面の状況はというと、たとえば右の写真。(拡大写真(別ウィンドウ、1280×960))ご覧のように道路が各所でひび割れているだけでなく、脇の側溝も破壊、変形しています。道路の中央部分は仮補修してありますが地震発生直後はたぶん、もっと酷かったはず。
これでもまだ、被害は軽微な方。寺尾駅を含めて、砂丘の上部──ただし今回、頂上部は訪れていない──は、被害は確認できるものの、それほどでもなかったのです。
でもどうやら、昨日お伝えしたように斜面全体が「ずり落ちて」いる、つまり水平方向に低い方へ少し移動しているようなのです。当然、その最下部では、あちこちから大きな力が掛かるため、辻褄(つじつま)を合わせるべく変形が発生します。その結果の一つが、2枚目の写真。(拡大写真(別ウィンドウ、1280×960))
半地下式の車庫の床が、割れてしまっています。このお宅の場合、車庫の奥の空洞部分にも家屋の質量が掛かっているため、このような結果になってしまったらしい。ただし車庫の床面は割れてはいるものの、バラバラにはなっていません。
車庫天井部は当然として、間違いなく床面にも鉄筋が配筋されているはず。でも写真を良く見ると、車庫の部分が大きく「ハ」の字状に開いてしまっていることがわかります。どうやら家屋の質量で車庫の中央部奥が凹むなど、(入口部分を除き)車庫全体が歪んでいるらしい。
冷静に考えると、とんでもない被害。娘夫婦のマンションを目指します。
斜面を下るとそこには、言葉が出ないような別の光景が...。(続く)
■3月14日(木) 砂丘上部の沈下もさることながら、斜面は大きく側方流動 ──液状化、恐るべし──
唐突に感じられるかもしれませんが、当地における能登半島地震の、その後を。
何度かお伝えしていますが、当地は海岸沿いの砂丘の上に旧市街地──現在は寂れている──があり、その内側、かつて湿地帯だった低い場所に新市街地が広がっています。
1枚目の写真は先日、その低い地域を歩いている時に撮影したもの。左奥のビルは、銀行の柏崎支店。その駐車場での工事音で気づいたのです。というか、当地はこのところあちこちで土木工事の音が。
お察しの通り、地震で受けた被害の復旧作業です。ここもその一つ。写真を良く見ると、手前および右側の駐車場が沈下しており、しっかりとした基礎によって支えられたビルとの間に段差が発生。
それを埋めているようです。このように低く、いつも土中に水分が多い土地は液状化によって沈下。ただし土中の下水管などは相対的に軽いため、マンホールが地表から飛び出ることも。(新潟県中越地震の際の、2枚目の写真)
それでも倖いなことに──「センセイが確認した限りでは」という限定付ですが──不等沈下は見られない。その足で旧市街地、つまり砂丘側へ移動。実は先日、気づいたことがあったのです。その時はカメラしか持っていなかったため、今回は自宅から30cmの物差しを持参。
以前ご紹介した「フォンジェ」の基礎部分(地上部)です。写真は前回ご紹介したものの、黄色の矢印の先つまり前回の写真の右側から、左側を見ています。高さに関しては、低い場所から標高が高い方を見上げた状態。
上部の薄青色の部分は地下1階ですが、ここは砂丘の内側で低く、頂上部との高度差があるため、地上に出ています。前回もお伝えしましたが、物差しを当てている部分の下部40%くらいが新潟県中越地震、新潟県中越沖地震、そして今回の能登半島地震で沈下したものと考えられます。(たぶん建物はあまり沈んでいない)
問題はその沈下幅。物差しを当てている部分の沈下幅は約180mm。それが奥へ行くに従って、つまり砂丘の上部へ行くに従って減少しているのです。(ただし遠近法の原理で、手前が大きく見えることに留意)
一番奥での幅はわずか20〜30mm程度。「フォンジェ」の前面は砂丘のほぼ頂上部。そこでも今回、基礎のない部分では50〜100m程度の地盤沈下が発生。この部分の沈下は、これまでの三つの地震の影響が合わさったものですがどうやら、土砂の流出のため、砂丘の中腹部の方が沈下幅が大きいらしい。
砂丘における「側方流動」が起きていることには気づいていたのです。でも今回初めて知ったのですが側方流動も、その背後には地盤の液状化現象があるとのこと。これにはびっくり。
もしかすると地震の揺れによる被害についてはイメージできても、自分は液状化現象には無縁だと思われている方がいらっしゃるかもしれません。センセイが住んだ場所では、東京都西部の多摩台地などでは、起こりにくいと思う。
ただし、丘陵の埋め立て地など、そうでない場所も存在しますが。何より、いわゆる「平らな場所」つまり当地の新市街地のように、かつて沼地だったような場所や土中の水分が多い場所、地盤の軟弱な場所では、地震の際に液状化が起きても、決して不思議ではありません。
液状化現象は新潟県だけでなく、石川県、そして富山県でも多発。報道によると今回の能登半島地震では、金沢市の北に位置する内灘町で、地盤が水平方向に約12m(!!)も移動した事例が確認されているそうです。俄には信じがたい数値ですが、もちろんこれが現実なのでしょう。
どうやら、地下にパイルを打設したとはいえ、これまでいくつかの地震に襲われながらも拙宅の被害が少なかったのは、僥倖(ぎょうこう)と言うしかないらしい。なお、この件に関してはたぶん、近日中に県内他地域の状況をお知らせできるのではないかと考えています。(ただしできない可能性もあります。その際は悪しからず)
■3月13日(水) 警察庁と警視庁すら区別できていない... ──プロバイダーを変更すべきだろうか──
今日はタイトル通りのお話。ご存じの方や、もしかすると「自分にも届いた」という方もいらっしゃるのでは?
センセイは28年くらい前からインターネットとe-メールを使用しています(その前の数年間はパソコン通信)。この間、プロバイダーを変更しておらず、メールアドレスは同一のものを使用し続けています。
ただし正確には、途中で変化が。もともとのプロバイダーが楽天に買収されたため、このサイトも現在地へ移転。同時に、メールアドレスにも、楽天の一員であることを示す文字列が付加されました。
ただし古いアドレスに届いたメールも新しい方へ転送。(選択の余地は与えられていなかった)つまり届いたメールのアドレスから、新旧どちらに届いたかがわかります。他方、長い間使い続けているので、アドレスが悪意のある業者に流出し、転売されています。(昔の各社の管理は、とても甘かった)
だから毎朝、センセイがまず行うのは、15通くらいのスパム・メールの削除。日中も届くので、迷惑メールの総量は1日当たり25〜30通くらいでしょうか。その内容はというと、カードトラブルなど代金や料金の未納、そして怪しい薬品類の販売ばかり。
そんな昨日、新たに届いていたスパムの中に、写真のメールが。報道されていた迷惑メールです。今回、支払うべき金額は230万円、振込先は3銀行でした。読んですぐに気づくのは、警察庁と警視庁の区別がついていないこと。
まぁ、確かに歴史的な経緯から、東京「都」の警察を意味する後者にも「庁」という文字が用いられていますが。ちなみに、届いたメールに簡体字はありませんでした。どうやら相手も日々、品質向上を目指しているらしい。
さて、その迷惑メール、大半は一瞥(いちべつ)しただけでスパムとわかるのですが、カード決済などとのタイミングで一瞬、戸惑ってしまう場面があることもまた事実。皆さんも同じような経験をされていると思います。
センセイの場合、スパムの宛先はすべて旧アドレス。ただし新アドレスへの転送設定は変えられません。一番効果的なのは、プロバイダを変更すること。このサイトのサーバーとドメインは別会社にお願いしているので、プロバイダを変更しても、このサイトへの影響はないのです。
それに個人的には、楽天を好きになれそうにないし...。(あくまで個人的な感想)実は現在、地元ケーブルテレビ局の、当地では2回目の工事を拙宅付近で実施中。「今なら工事代金無料」──初回工事の時もそうだった──との触れ込みです。それはともかく、そのプロバイダ、テレビそして電話代の総額は、現在とほぼ同額か少し安い程度。
なおインターネットの通信速度は現在の約100Mbpsに対して1Gbpsと、1ケタ向上します。(ただし拙宅内のシステム全体は、そこまで対応していない)ただし問題点も。
まず、メールアドレスの全面変更。関係のある方々にアドレス変更を周知徹底できるかどうか。そしてアドレスに紐づけられた各種のアカウントを、一気にすべて更新することができるか。そしてもう一つ、別な問題も。
FM放送の受信環境です。ケーブルテレビ局の案内には、FM放送(アナログ)について何ら言及されていないのです。普通に考えたら、VHF帯のローバンド(FM放送とともに、かつてNHKテレビ(アナログ放送)が使用していた周波数帯)の信号をケーブルで流すとは考えにくい。
だからこそ今までケーブルテレビ局の提案を無視し、FM放送の受信状況改善に取り組んできたのです。ところが最近、何と、ケーブル放送にFM放送を流していることが判明。うまく行けば音質が劇的に向上する可能性があります(もちろん、その逆も)。う〜ん、でも、アドレスおよびアカウントの変更を含めて、非常に悩ましい...。
この件、今後の展開はまったく不明です。悪しからず。
■3月12日(火) そもそもスコアを「読む」ことができれば... ──「フーガの技法」留守録失敗の原因──
留守録失敗の件が予想外に長引いてしまいまいましたが、さすがに結論を。
ただし厳密に言うと、トラブルの本当の原因はまだ特定されていません。ソフトの開発元にも連絡──「クレーム」のつもりではない──したのですが、現時点では原因不明とのこと。ただし金沢から持ち帰ったものを含めて、2台のMac miniで完全に同じ状況。
センセイの勘違いその他ではありません。結論から言うと、以前言及した「サンプリング周波数」(Fs)の混乱が大きく関係していることは確実。デジタル機器は、それ自身が水晶素子などを用いて固有のリズム(「クロック」)で動作しています。
ただし今回のように、他の機器と連携を取る時はややこしい。今回の場合、根本的には自分のリズムで動きつつも、相手から受け取ったS/PDIF(Sony Philips Digital InterFace)──実に安直な名称だ...──という規格の信号で同期を取り(シンクロナイズ)、サンプリング周波数を確定(ロック)。
その上で、音楽データ(およびその他情報)を解読します。明らかに、その過程の前半で何らかの混乱が発生してます。実は今日もFsの混乱が発生し、ノイズだらけが多発。ソースやソフトを何回か再起動させて事なきを得ました。
途中、極めて興味深い現象が。再起動の後、ひとまずノイズが出ない状況になったのですが、入力音源をモニタしてみると音声が異常に「低い」。音量が「低い」のではなく、音の高さが低い(!!)のです。
考えられます?FMのニュース──人の声は、異常を発見しやすい──をモニタしていたのですが、全員のアナウンサーの声が低く、しかも間延びしています。(実話)
近日中にご報告しますが、最近、一部AV機器の配置と接続を変更。音源はFMチューナーで、サンプリング周波数48.0kHz。ところが新しく配置した機器によると、モニタのFsは44.1kHz。これはCD(およびPCM録音)が用いるサンプリング周波数。
あり得ない事態です。つまり、ゆっくり再生してる(!!)ため音が低いのです。当然、短時間ならともかく、どこかで辻褄を合わせられなくなり破綻。ノイズだらけになってしまいます。ちょっと信じがたい事象でした。
なお昨日お伝えしたように、録音の異常は徐々に解消。その理由はまったく謎のままです。デジタル機器の場合、成功するにせよ失敗にせよ、一度関係が成立してしまうと、それが途中から変化するという事象は理解不能。
でも、これが事実なので。音楽の本質は、内容。傷つきながらも生き延びた、カザルス弦楽四重奏団によるバッハの「フーガの技法」(後半2/3くらい)を何回も聴いているのですが、これが本当に素晴らしい。完璧な演奏です。
聴衆もあっけに取られています。ただし、お伝えしたように「フーガの技法」は絶筆、未完。
そのため、カザルス弦楽四重奏団による末尾の解釈と演奏、そして演奏全体を締めくくるコラール(BWV668a)の演奏より、少なくとも一部の聴衆がどこで演奏が終わったのかわからないという事態が発生しました。
完全な演奏(の録音)を聴きたかった。なお、ヴァルヒャとの解釈との差は、予想外に少ない。カザルス弦楽四重奏団が先達に倣ったのではなく、おそらくセンセイが「古くさい」と感じていたヴァルヒャの解釈が相当な部分、正当だったということなのでしょう。
自らの不明を恥じ入るばかり。で、そもそもこの問題、録音準備時のセンセイのチェック不足──それはそれで、当然反省すべき──だけではないのかも。
もしセンセイがスコア(「総譜」)を読み込むことができていたら、話は別だったはずなのです。写真左側は「フーガの技法」、右側は良く聴く「音楽の捧げもの」(Das Musikalische Opfer, BWV1079)のスコア。
楽譜を読めないわけではありません。ただしセンセイが音楽とピアノをちゃんと学んだのは、大学に入ってから。楽譜を読むことができたとしても悲しいかな、全体像を掴むことはできない。音楽家の方は偉いなぁ...。でも、まぁ、スコアを買った自分を、少しは慰めることにしましょう。
そして、もう一つ。バッハの「白鳥の歌」である「フーガの技法」、本当は13年後の昨日、完結させたかったのです。
こちらはまことに、情けない...。
■3月11日(月) 「フーガの技法」留守録失敗の件、まずは全体状況の把握と、「現場検証」(?)から
予想外に1日空いてしまいましたが、「デジタル留守録」失敗の続きを。
お伝えしたように録音当日、センセイは深夜にご帰宅。翌朝から原因究明を始めました。ただし、まず、全体の状況を再確認する必要が。現場検証がいい加減だと、その後の捜査(?)が無意味になってしまう可能性すらあります。
実際、今回もそうなりかねなかったのです。録音時間は1時間40分。良く聴いてみると何と、途中で状況が変化しています。これはまったく想定外。放送開始当初はノイズだらけなのですが、25分くらいから徐々に音質が良くなっていきます。
頭の中は「ナシテ?」だらけ。でもこれは事実。そして30分くらいすると、ほぼ正常な録音──ただし背景のノイズは怪しい──になり、これが番組終了まで続きます。後述しますが、これが原因究明に向けた一つのヒントに。
録音データがおかしいのは確実。右の写真は記録されたデータの一部を拡大したもの。一つ一つの点が「サンプル」と呼ばれるもので、ある瞬間(横軸)の、振幅(縦軸)を表しています。
他の部分はともかく──実はこれも怪しい──黄色の円で囲った部分でデータがジャンプしています。この急激な変化は、「パルス」と呼ばれる波に近いもの。
この周波数でこれだけ大きな振幅幅があるのは明らかに異常。これだと高い周波数帯にエネルギーが集中し、自然には存在しない音になります。
これを極端にしたのが、2枚目および3枚目の写真。説明のためにまず、1kHzの正弦波(サインウェーブ)を用意。1kHzはそれなりに高い音です。それをソフト(Sound It!)で極端に増幅。要するに天地をできるだけぺちゃんこにします。(2、3枚目の左側)
これが「矩形(くけい)波」と呼ばれる波(に近いもの)。要するに連続するパルスです。本当は電子的に矩形波を用意したかったのですが、ちょっと無理。それでこのような方法で作成しました。
2、3枚目の右側は、それを周波数アナライザで分析したもの。両者の内容は完全に同一ですが、2枚目(拡大写真(別ウィンドウ、1262×710))は横軸がリニア。他方、3枚目(拡大写真(別ウィンドウ、1262×710))はログ目盛り。
人間の感覚に近いグラフで、印象がずいぶん違います。周波数アナライザの2枚目、左端近くが1kHzで、右側に規則正しくピークが並んでいます。これは1kHz(「基音」)の奇数次(3、5、7・・・次)高調音。
要するに「倍音」なのですが、これが非常に高い周波数帯まで延びています。自然界ではあり得ない現象──エネルギーの問題──で、人工的に作り出すしかありません。3枚目の周波数アナライザはログ目盛りなので、中央が1kHz。
ログなので見かけ上、右側がどんどん詰まっていきます。今までご紹介したログ目盛りでの周波数アナライザのグラフ(こちらやこちらなど(ただしこの時は高域が過度に強調気味))と比べるとわかりますが、本来ならば直線状に割と急角度で低下。
これもエネルギーの問題です。(高い周波数はエネルギーが大きい=自然界では大振幅になることができない)実は一昨日ご紹介した周波数アナライザのグラフからも、傾きが浅く(黄色の楕円で囲った部分)高域が不自然に延びていることがわかります。さらに慣れてくると、グラフの形状がかなり単純であることに気づくかも。
今回は弦楽四重奏。つまり完全にアコースティックな音源なので、本来はもっときめ細かいカーブになるはずのです。つまり今回、「録音」した内容は、確かに本来の音源に関係しているものの大部分が音楽とは無縁のパルス列。でも、それならなぜ時間の経過とともに、割とまともな録音に戻ったのだろう...。
実は当初、センセイが一番怪しいと睨んだのはNHK側の放送事故。放送内容のデータ、あるいは放送時の伝送系でトラブルが起きた。でも、かつてのアナログ時代はテープレコーダーを切り替えながら放送していました(!!)が、現在は完全デジタルの内容を、コンピュータで送り出しているはず。
それに、異常が徐々に改善された理由の説明も難しい...。そこで改めて、録音データを検証。倖いにも、アナログ時代の習慣で放送30秒前に録音を開始するようセットしていました。アナログテープだと、最初と最後に磁気を塗布していないリーダーテープが。
磁気テープとを別なテープで繋いでいたこともあり、トラブルが起こる可能性があったのです。(完全な昔話です)本来の番組の前の、7時のニュースの最後をちゃんと聴くと...やはりおかしい。つまり「放送事故説」は(ほぼ)完全な濡れ衣と判明。関係者の皆様、申し訳ございません。伏してお詫びいたします。
ただしさすがに長すぎるので、今日はこれくらいに。決して長引かせる意図はないのですが、残念ながら次回まで続いてしまいます。悪しからず。
でも逆に、朧気(おぼろげ)ながらもこれで、目指すものが微(かす)かに見えてきたようです。
■3月10日(日) 「シャルルや、もっと低く飛びな」 ──12羽の白鳥は、北帰行の編隊飛行訓練中──
予定を変更して、もうすぐお伝えできなくなる内容を。
当地は今日も寒かったのですが雪もほぼ止んだので、お昼は外へ。地域の基幹病院の隣の道を歩いていると、背後の高い位置からかなり大きな音が。鳴き声です...が、え"っ、まさか今ごろ?!
一瞬、我が耳を疑ったため、デジカメを取り出すタイミングを逃してしまいました。急いでカメラを用意したのですが、被写体は上空の高いところ。ピントはほぼ確実に合わない。そこで地上の遠くの被写体でピントを合わせ、上空に向けます。
即座に対応できなかったので、後ろ姿を追いかけるような位置関係で撮影。(拡大写真(別ウィンドウ、729×547))白鳥の群です。小型デジカメだと、これが限度。拡大写真は原寸切り出しです。
白鳥と聞くと、優雅で華奢なイメージを思い浮べるかもしれませんが、近くで見る実際の白鳥はとても大きく、もの凄い迫力。正直なところ、「この質量で、よく飛行できるなぁ」と心配になるほど。
鳴き声は非常に低い。だから夜中でも白鳥だとわかります。でも今はもう3月中旬。実家の近くの田圃が飛来した白鳥の餌場の一つなのですが、2月中旬からもう、その姿を見かけていません。
だから、もう皆がシベリアに帰ったものと思い込んでいたのです。群れは「グワーッ、グワーッ」と音を立てつつ、刻々と相互の位置関係を変えながら──中には団子状態になることもあった──つまり編隊を変形させながら飛んでいきます。
整った三角形の編隊こそ、全体のエネルギー消費量が最も少なく、効率的な飛行なんだそうです。どうやらこの一家(?)は、その綺麗な編隊を目指しつつ飛行訓練中らしい。もしそうだとすると、あの「グワーッ」という鳴き声はきっと、「シャルルや、もっと低く飛びな」。
う〜ん、でも今ごろ飛行訓練をしているようじゃ、空中海賊ドーラ一家には敵わないな。