2025年4月5日更新(2025年4月13日ページ移動)
■4月5日(土) 2時間半の鉄粉除去および洗浄で、冬のざらざらしたサメ肌は春のしっとりツヤ肌に...
当然のことながら、「鉄粉」ですから人間のことではありません。
当地はこのところ天気が良くなく、後述するように桜の開花も予想より遅れ気味。しかも風が収まらないので、予定していた作業も実施の見通しが立たないままだったのです。それでも今日は確実に晴れ。
風はまだ残りますが、それでも昨日までよりは良いはず。そこで、この時季の恒例行事、自動車の車体表面に付着した鉄粉を除去することに。冬を何とか耐え抜いた車体は表面が汚れてザラザラ。いわば「サメ肌」。
汚れの主成分はもちろん砂やシルト、あるいは粒径がさらに小さい泥。しかも先日は黄砂がかなり降ったし。そこに花粉がこびり付いている状態。加えて、冬季はなかなか洗車できないという事情もあります。
でも、それだけではありません。冬季は、どんなに丁寧に洗っても車体表面がザラザラしたままなのです。お伝えしたように、ブレーキダストその他の鉄粉が塗装面に食い込んでいるため。しかも雪国では冬季、道路に塩化カルシウム(CaCl2)を大量に散布。
路面凍結によるスリップ事故防止のためですから、本当に感謝しているのです。
ただし塩化カルシウムは、要するに塩。これによって車体下部を中心に、付着した鉄粉が急速に酸化して「錆びる」こともまた事実。
酸化した鉄粉は黄色あるいは褐色の小さなシミになります。以前はシミと「ザラザラ」の実体がわからなかったため、消しゴムなどを使って物理的に除去していたのです。されど数年前から、還元剤を使って化学的に除去。
退職後、降雪期に長距離走行する機会は激減。ただし皆無ではありませんし、少なくとも週に1回は実家へ行く必要があります。そこで今月中旬から金沢工大および前任校での講義が始まる前に、鉄粉を除去して丁寧に洗車することに。
ひとまず洗車してから、薬剤を塗布。やはり車体後部を中心に、側面(写真は助手席前)および天井後部など、空気の渦が発生しやすい場所に鉄粉が付着しています。(1枚目の写真。拡大写真(別ウィンドウ、1280×960))
写真は縮小しているので「汚れ」程度に感じられるかもしれませんが、実際には相当なインパクトが。
それでも客観的には、金沢まで通勤していた時ほどではないと思う。つまりセンセイの(物理的な)活動度と対応しているということなのでしょう。
何度も何度も洗車して、薬剤および還元された鉄粉を完全に洗い流します。作業の合間を利用して、玄関脇のステンレス製郵便受けを外し、自動車と同じように鉄粉を除去。こちらの写真の方が、実態に近いかも。(拡大写真(別ウィンドウ、1280×960))
なお、いずれの写真も泡が発生していることがわかります。これは鉄粉除去とは無関係で、薬剤に含まれている界面活性剤──つまり石鹸あるいは洗剤──によって発生したもの。もちろん油脂汚れには効果があるはず。
車の方は洗車後、丁寧に拭き上げます。郵便受けの方は別な対応を。鉄粉が(ある程度)除去された後は界面──FeおよびCr、Ni原子と空気(中のO2)の境界──が剥き出しで、活性度の高い状態。
このままでは再びすぐに酸化されてしまうので昨年同様、乾燥後は防錆(ぼうせい)を目的としてアクリル樹脂を塗布します。(お約束通り)結論からお伝えすると、アクリル樹脂塗布は防錆効果があります。この1年間でステンレスの表面はある程度侵された(=酸化されて錆びた)ことは事実。でも作業前に手で擦ってみると、錆は浅い。(逆に相対的に深い錆は、去年も今回も除去されていない)
実際、1年間の錆は薬剤できれいに除去されています。というわけで、どうやら西村家では今後、鉄粉除去が春の風物詩になりそう。ただし今日の作業でコートされた自動車用の鉄粉除去剤を3本ちょっと使用。金額的には6,000円弱と、かなり痛い。
センセイは年金生活者なので。もちろん、効果はきちんと評価しているつもり。そこで今後はコスト・パフォーマンスを考えて。業務用の容量の大きなものを購入して、適量をスプレー缶に入れ替えながら使おうかと考えています。
この件については来年以降に。ここまでの所要時間は2時間半。終了時にはお昼を回っていました。頑張った甲斐あって、ザラザラの「サメ肌」は「しっとり、ツヤツヤ肌」に。冗談とお感じになるかもしれませんが、実際、全然違います。
道具を片付けて、いつもより1時間半遅れで外出。帰りに立ち寄ったよしやぶ川の桜は、冒頭でお伝えしたように開花が遅れ気味。蕾は着実に膨らみを増していますが、寒さで迷っているかのよう。十数本ある成木の桜を確認したところ、開花は写真中央と左下の、2輪のみ。(写真(別ウィンドウ、1280×960))
明日にはもう少し開花するのでしょう。されど明日は、あいにくの天気との予報。
当地での「開花宣言」は明後日、7日(月)にずれ込む見込みです。
■4月4日(金) 「アンパンマン」のすぐ近くに今度は、青く大きなゾウが出現。しかも周囲には...
今日は金曜日。つまり実家の両親の面倒を看る日。
早めのお昼を頂いてから自動車で出かけます。1週間分の食料買い出しが主任務なので。ただしこのところガソリン価格が急上昇しているため、金沢工大および前任校での初回講義分の燃料を途中で補給することに。
計700kmを走行するので、かなりの量、そして金額。
給油した関係で、今日は途中までいつもと違う経路を選択しました。崖に描かれた大きな「アンパンマン」の場所まで接近した時、え"っ?!
冗談抜きで、我が目を疑いました。一瞬、あるお宅の敷地の真ん中に、全身真っ青なゾウが立っていたのが見えたのです。高さは1.5〜2m程度。目が印象的。でも、ナシテ?
用件があるし、全貌を把握していないので、往路はそのまま現場を通過。通常、帰路は幹線国道を走るのですが、往路を戻ってみました。邪魔にならない場所に車を止め、カメラを手にして歩きます。青いゾウが見えてきました。(拡大写真(別ウィンドウ、1280×960))
やはり、ゾウは確かに存在...え"〜ぇっ?!道路は建物の右側(奥の青白いビルとの間)を走っています。センセイは往路、右側から中央奥へ走り、帰路はその逆を。ちなみに「アンパンマン」が鎮座(ちんざ)しているのは中央左側、瀟洒(しょうしゃ)な平屋建物の奥。
いくつかの建物の陰になるため、右側の道路からゾウを見ることができるのは、ほんの一瞬。どこまで公道なのかがわからない──私有地に無断で立ち入るわけにはいかない──ので、明らかに公共の道路と考えられる場所を、やや遠回りに歩きます。写真手前、田圃のように見えるのは営農用のため池。(水害対策の「調整池」を兼ねているかも)
やがて見えてきた全貌は、まったく予想だにしなかったものでした。営農用の倉庫と推測される右側の建物の壁面には、ご覧のように親子連れの動物の絵が。手描きの絵は平面的で、ゾウを含めて目の描き方に共通の特徴があります。まるで私設動物園にいるかのよう。
でもホントに、ナシテ?私有地との境界がわからなかったため、今日はこれ以上の探究を断念しました。帰宅後に調べてみると、動物たちの手前を走っているのは公道らしい。
所用や天気との関係があるため時期をお約束することはできませんが、あまり遠くない将来、近くから見た「動物園」の様子をお伝えしたいと考えています。
■4月3日(木) 主人公「ラファウ」が手にしているのは、当時最先端のアナログ・コンピュータだった
「アストロラーベ」および星座早見の最終回。
今日の写真は3枚(それぞれ拡大写真あり)。一瞥(いちべつ)してわかるように、2、3枚目は完成した星座早見(左側)と、修復後に組み立てたアストロラーベ。後者については、2枚目が表──とされている──で、3枚目が裏。
それはともかく、1枚目(拡大写真(別ウィンドウ、1280×340))が目に入った瞬間、知っている人は当然「○○○」と口にするはず。他方、知らない人は「これ、何?」。
答合わせは後にして、まず2、3枚目の星座早見から。先日お伝えしたように基部および回転部を整えた上で最上部を糊付けし、完全に乾燥させるために重しを置いて放置しました。
こう記すと簡単な作業に思われるかもしれません。ただし実際には予想通り、単に回転部を切り抜いただけでは凸凹があるため、そのままでは回転不能。また回転部の外周にあたる基部の厚さを倍くらいに確保しておかないと、周囲だけでなく上下方向の摩擦も大きい。
正直なところ、この点でもまったく動かないはず。悪いことは言いません。初心者は書店等で完成品を購入する方が無難です。基部の糊が完全に乾いた上で凹凸を減らし回転部も外周全体を1mm程度削って、やっとスムースに動くようになりました。
他方、使い方は簡単。言い方を変えると、近代的な星座早見でできることは限られています。
2、3枚目の写真(左側)は夜間、北を上にしてゴロンと横になり、星空を見ている状態。開口部(星座早見の中心付近から下側)には各恒星と星座(+季節によって天球上を移動する太陽)が記されています。(拡大写真(別ウィンドウ、1280×931))
可動部は内側、青色の回転部のみ。
回転部の最外周には日付が、最上部の対応する部分には時間が記されています。両者を一致させることで、その時点での星の配置を確認することができます。
逆に、星空からおおよその時刻(あるいは日付)を知ることも可能。頑張れば観測地点の緯度経度もある程度推測できるのですが、基本的な機能はこれだけ。ちなみに間違いなく操作したにもかかわらず、星座早見に載っていない明るい星がいくつか見えるのが普通。
それらは中世まで惑星扱いだった月か、「上位惑星」──当時の表現──である火星/木星/土星のいずれか。「下位惑星」水星と金星の可能性も残りますが、夜間これらを見ることはできません。ちなみに水星を実際に肉眼で見たことがある人はごくごく少数。
「地動説」──日本語は誤訳──提唱者のコペルニクスも、自分では見たことがないと考えられています。(センセイはICU時代に1回だけ見たことがある)ようやく本題。
2、3枚目右側のアストロラーベ、最近では魚豊氏の話題作『チ。―地球の運動について―』(第1集)の表紙カバー(画面左上)他でこの集の主人公「ラファウ」が手にしているものです。
カバーから、なぜか不安感を覚えた方が多いはず。ラファウ本人は、アストロラーベを用いて熱心に天体観測中なのですが、彼の足元と背後の陰は離れている。しかも彼の首元には太いロープが。もちろん絞首刑を意味しています。
ただしこの絵はカバーにするため、本文中のものをセンセーショナルに加工したもの。本文中のラファウは、アストロラーベで割と淡々と天体の角度を測定しています。このモードに相当するのが右の写真。(拡大写真(別ウィンドウ、1280×931))
ラファウは、(補修した)「アリダード」を使用しています。『チ。』以外でも、たとえばウンベルト・エーコの『薔薇の名前』(映画版)の中で、僧院を訪れた主人公バスカヴィルのオッカム──モデルはウィリアム・オッカムおよびシャーロック・ホームズ──が同じような使い方をしています。
これらをご覧になった方は当然、「望遠鏡が発明される前の天体観測器具なんだろうなぁ...」というイメージを持たれるはず。必ずしも間違いではないのです。でもそれなら、アストロラーベの基盤となる「マーテル」──および、昨日はご紹介しなかった「ティンパン」(Tympan)──の役割がわからなくなります。実は、こちらの方こそ本質。
アストロラーベは、天文学における「計算尺」(1枚目の写真。ただしこちらは汎用)に相当にする計算機なのです。計算尺は16世紀末から17世紀にかけて考案された対数を利用したもの。ちなみに1枚目、やや色褪せた計算尺は、現職工業高校教員のまま若くして逝去した叔父から譲り受けたものです。ある意味、形見。
彼はセンセイに期待していたのでしょう。それに応えているかどうか、実に心許(こころもと)ないのですが。脱線しました。
アストロラーベは、得られたデータから緯度経度を計算したり、日付や時間、太陽が昇る時刻を推測したりするもの(以上は主に表面を使う)。現代人には想像できないと思いますが、中世まで重要視されていた「自分が生まれた瞬間の星の配置」(「アセンダント」(Asendant))を知ることもできます。
当時、アセンダントでその人物の運命が決まっていると考えられていたのです。裏面は水平線上からの角度測定だけでなく、三角関数を計算する(!!)ことができます。つまりアストロラーベは望遠鏡発明前の最高精度の観測器具であるとともに、最先端のアナログコンピュータ──に相当するもの──だったのです。
『チ。』本文中に、ラファウがアストロラーベを腰からぶら下げる場面が。『チ。』の趣旨を批判する意図はない──決して誤解なきよう──のですが、これはまず物理的に不可能。何しろ重すぎるので。加えて当時も超貴重かつ高価だったはずです。しかも回転の中心となる「ポスト」が物理的な弱点。
回転軸を保護する必要があります。レプリカも。修復前は安易にクリップを延ばして回転軸として用いていたのですが、(老い先短いので)今回、きちんとネジ止めしました。
改めて各写真をご覧いただくとアストロラーベ、そして『チ。―地球の運動について―』に関する皆様のイメージがが、少し違って見えるかもしれません。
■4月2日(水) 講義開始に向けた教材準備は最終盤。中世の天体観測器具「アストロラーベ」を補修しました
今日はタイトル通りのお話。
3月から始めた教材の補修(こちらおよびこちら)や新規製作(星座早見)の続きを兼ねています。「アストロラーベ」(Astrolabe)というのはアラビア起源の天体観測器具。同地域および中世のヨーロッパで用いられました。
今回は補修編。
右の写真が「アストロラーベ」。もちろんレプリカ(紙製)です。直径は約28cm。ICUの助手だった1989年、国際会議発表で訪れた西ドイツ(当時)ミュンヘンのドイツ博物館で購入しました。
帰国後に確かめたところ続いて訪れたイギリスの、グリニッジ天文台が製作したものでしたが。1回だけ見た実物はほぼ同じ大きさ。真鍮製なのでとても重い。ただしもっと小さなものもあるようです。残存しているものは非常に高価で、数千万円(!!)するらしい。
すぐに組み立てたのですが、その時の作業がちょっといい加減すぎた。ICU時代の講義では出番がなかったものの1991年の前任校着任後、天文学史の中で演示してきました。されど購入後、35年以上が経過。
この間、数度の引っ越しに伴う運搬を経験していますし、組み立てに一部セロハンテープを使ったこともあって、あちこちが損傷、劣化。そこでこの機会に、ちゃんと補修することにしたという次第。まず、組み立て済の各パーツを分解します。1枚目の写真左側、円形の物体が「マーテル」(Mater)という基盤。
両面に線と目盛りが刻まれ、中央には回転の中心となる穴があります。
右隣のプラスチック製の円形部品は「リート」。目盛りが刻まれた「枠」だけの実物を再現したものです。ちなみにすべてラテン語で記されています。
これらについてはきちんと穴を空け直したこと以外、特別な補修はできませんでした。(紙質の劣化と、紙サイズの関係)今回、補修に特に注力したのが右の、時計の針のような部品。上が「アリダード」(Alidate)という端の方に除き穴がある部品。すでに補修作業中です。
下──意図的にひっくり返している──が「ルール」(Rule)。大変申し訳ありませんが、写真1枚目と2枚目では両者の位置関係が逆転します。このページを書いている時に気づきました。すみません。
「アリダード」および「ルール」は、「マーテル」と同じ厚さの紙製。サイズおよび形状の関係で、どうしてもペラペラになってしまいます。強度を高めるため今回、写真のように二つの部品の裏側に厚紙を裏張りしました。
「アリダード」についてはさらに特別な補修──というより一部再製作──も。この両端には除き穴があります。お察しの通り、アストロラーベ全体は上から手で吊るすことで水平垂直を確保。(ただし精度の問題は残る)
その上で両端の覗き穴を用いて、目的の天体の水平線からの角度を測定します。(他にも様々な機能がある)実物には支えがないのですが、さすがに紙製では無理。そこでこのレプリカでは、三角形の立体構造にして強度を確保しています。実物には、穴の空いた部分しか存在しません。
それにしても、覗き穴の部分をどうやって固定したんだろう。レプリカでは「アリダード」そのものが紙の薄さで全体ペラペラだし、補強のために用いたセロハンテープが経年劣化でまったく無意味な存在に。
しかも片方の「覗き穴」部分の大半が取れています。そこで今回、「アリダード」補強に加えて厚紙と黄色い色画用紙を使って、失われた「覗き穴」パーツを再現しました。糊付け後、十分に乾燥した上で「覗き穴」部分をホッチキスで補強。
将来錆びる運命ですが、その頃、センセイには講義の機会がありません。それにそもそも、センセイが存在しているかどうか極めて怪しい。
いい加減だった回転軸をちんと整備し、各パーツを再度組み立てて修復作業完了。肝心要の「アストロラーベ」の修復具合と実際の用い方、そして意味合いについては、後日。
(明日かどうかは別にして)続きます。
■4月1日(火) エイプリルフールのネタであってほしい... ──JR東最後の寝台列車が引退する模様──
予定を変更してお伝えします。
読売新聞は、JR東日本が運行する最後の夜行寝台特急「カシオペア」が6月に引退すると伝えています。個人的には今日初めて知りました。現在のところJR東日本からのプレスリリースはないようです。
個人的には、ついに来たか...という感じ。読売は車両の老朽化と機関車の減少が理由で(やむを得ず)...というニュアンスで報じていますが、現在のJR東日本に夜行寝台特急を活用しようという意志はまったくありまません。「ルビコン川」──知らない人は調べてね──を渡ったのはおそらく、夜行寝台特急「北斗星」廃止発表の10年〜15年くらい前。
北海道新幹線開業(2016年3月)後は、肝心要の青函トンネルがボトルネックになります。新幹線と在来線という走行速度が大きく異なる列車が走行するためです(在来線とは電源電圧も異なる)。新幹線と在来貨物列車運行は当然として、夜行寝台特急の扱いが問題に。当時、JR東が「北斗星」と「カシオペア」を、JR西日本は「トワイライトエクスプレス」を運行中。
他社はともかく東日本の判断は、手間がかかる割に利益の少ない夜行寝台特急を廃止。この機会に、当時請け負っていた貨物輸送からも撤退。両者に欠かせない高価な電気機関車(EF510型500番台)もすべてJR貨物に売却。なお見放された機関車は青色原色塗装のまま、北陸地区を元気に走行中です。
ただし甲種回送など、どうしても機関車(相当)が必要な場面が。そこでJR東日本は機関車の代わりに専用のE493系交直流電車およびGV-E197系電気式気動車を新製。要するに、当時流行っていた「選択と集中」です。この判断は、自社(および株主)の利益確保という観点から導かれるもの。
民間企業としては当然の判断。でも視点を変えると、大所高所から全国鉄道輸送体系をどう維持という視点が見事にに欠落しています。誤解されると困るのですが、決してJR東日本を責めているのではありません。国鉄分割民営化の必然的な帰結なのです。
要するに、目先の「効率」ばかりに注目。長期的かつ広い視野からこの国あるいは社会をどの方向へ導くかという理念と理想、そしてそれを具体化する方法を持たない。そんなこととは知らずに、当時のセンセイは夜行寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」(SA1)に乗車。
夜行寝台特急の魅力に取りつかれてしまいました。
センセイはその後、「北斗星」および「トワイライトエクスプレス」を各8回、計16回乗車。しかも各5回は最上位の「SA1 ロイヤル個室」。
「サンライズ瀬戸・出雲」も8回くらい乗車しており、そのほとんどがSA1。鉄道ファンなら絶句するに違いない強運ぶりです。
大阪と東北を結んでいた「あけぼの」、そして青森/函館までの「日本海」などを含めて、センセイは夜行寝台特急に51回ないしは52回乗車しているはず。
しかも個室を確保できなかったのは、急行「きたぐに」と特急「あけぼの」の2回だけ。(ただしいずれもA寝台)写真は2001年8月、たまたま入手できた特急寝台券で、小学校低学年の娘とともに乗車した「トワイライトエクスプレス」SA1個室の車内(拡大写真(別ウィンドウ、1280×960)。札幌駅で撮影した写真そのもの)。
ソファーの背もたれを倒せば(電動式)ダブルベッド(5枚目の写真)に。トイレとシャワー(4枚目)も完備。意外に思われるかもしれませんが、それでいてトータルの料金は皆さんがイメージする(であろう)ほど法外ではありません(だからこそ、購入希望が殺到した)。たまたま今日は、4月1日。
「カシオペア」廃止、鉄道ファンとしてはもちろんエイプリルフールのネタであってほしい。でも以上のような経緯を鑑(かんが)みれば、その可能性はほぼ皆無。ちなみに読売が伝える「6月のツアー」は、おそらくこちら。いろいろな意味で、これから凄いことになるんだろうなぁ...。
ただし個人的には、それよりもグランドデザインを持たない──その必要性すら感じていない──ことへの畏怖(いふ)の方が、はるかに「凄い」のですが。
■3月31日(月) 「三寒四温」に似て、季節は行きつ、戻りつ... ──当地の桜の開花は今週末か?
──
目が覚めると、障子の外が薄暗い。
晴れているわけではないことを意味しています。静かなので、雨が降っているわけでもなさそう...というより、静かすぎる。もしかして、と思って外を見ると一面真っ白。((拡大写真(別ウィンドウ、1280×960))
北風が激しく吹き付ける「山雪」型と対照的に、低気圧に伴う「里雪」型は静かなのです。積雪は2、3cmくらい。ただし地表は暖まっているので道路の雪は消えています。すぐ近くにあるアメダス観測地点のデータも積雪0cm。いわば、写っているのは幻の雪。この週末、タイヤ交換をしている方をかなり見かけました。
この程度なら市街地での交通に影響はないでしょうが、郡部の標高がある場所は別。ご紹介した写真の奥、地域のシンボル「米(よね)山」(993m)および手前の峰がそうであるように、数cm〜10cm程度の雪が積もっているはず。幹線道路には融雪剤が散布されており無雪でしょうが、一歩外れると積雪あるいは道路凍結。
雪あるいは氷に対して、夏用ノーマルタイヤはまったく無力なのです。
9時過ぎに自動車でちょっと外出したのですが、フロントガラス下部に雪を載せた車を何台も見ました。まぁ、そういう方は当然、まだ冬用タイヤのままでしょうけど。
さて昨日、金沢で桜の開花が宣言され、都心では満開に。当地の桜は開花、満開ともに金沢より3、4日遅れることが多い。ただし実感としては、このところの寒さ故か例年より遅れているイメージ。車に乗り込む前に拙宅庭の枝垂れ桜を確認しました。(拡大写真(別ウィンドウ、1280×960))
もちろん蕾は膨らんでいますが、もうすぐ開花という雰囲気ではありません。帰宅後いくつかの用を済ませてから、お昼前に改めて徒歩で外出。その際、あちこちの桜の様子を確かめてみました。写真は先日ご紹介した「よしやぶ川」沿いの桜の幼木付近で撮影したもの。(拡大写真(別ウィンドウ、1280×960))
ただしこちらは幼木ではなく、成木。当然ながら個体差があり、この樹が最も成長が早い。ご覧のように先端部がピンクになっている蕾も。開花までもう数日というところでしょうか。
ただし今週の当地は、金曜日頃まで低温傾向。それを考えると当地で「あぁ、桜が咲き始めたなぁ...」と感じるのは今週末あたりかと予想されます。もちろん、ちょっと標高がある桜の名所はもう少し遅れます。ところで今回、かなり意外だったことが。
先週ご紹介した桜の幼木群の中の1本に、20輪ほどの花が咲いていたのです。(拡大写真(別ウィンドウ、1280×960))複数の幼木があるので、前回と同一かどうかは判然としません(おそらく別な樹)。されど少なくともこの樹は、タイミング如何によっては子孫を残せるかもしれません。かように行きつ戻りつしつつも、季節はゆっくりと、しかし着実に進んでいきます。
明日から4月。センセイを含めて、人間の世界は新年度に入ります。
■3月30日(日) センセイは年金生活者だし... ──公開データを利用して、星座早見を自作中です──
今日の当地は冷たい雨。
お昼に一時外出しましたが、それ以外はずっと在宅。この機会に、先日から始めた作業を再開することにしました。大きく見れば来月中旬から始まる講義の準備の一環。具体的には上旬にお伝えした教材整備です。
ただし前回は既存教材の修復でしたが、今回は新規作成。前任校では4月からの前期、主にセンセイの専門である天文学史を講義します。問題はそのイントロ部分。例えば最も基本的な日周運動──太陽や月、星が東から昇り、西に沈む現象──を、どうやって受講生に身近に感じてもらうか。
前任校時代は、まず内側に月や星が描かれた特別な傘で説明。(「研究室から」4日目)続いてMac実機上で天文シミュレーションソフト“Expert Astronomer”を起動して説明(「研究室から」3日目)していたのです。金沢工大に移籍し、MacBook Proに換わってからは旧Mac OS 9エミュレータ“SheepShaver”上で実施。
でも教育効果を考えると途中に、もうワンステップ欲しい。しかもアナログのものが好ましい。苦労を実感してもらった上で、シミュレーションソフトを使うべきではないか...と考えたのです。お察しの通り、用いるのは星座早見。使ったことがある方もいらっしゃるでしょう。(ただし最近はあまり使用されていないだろうと思う)
使用経験がなくても写真から、どんなものかイメージしていただけるはず。少し大きな書店へ行けば、科学コーナーで星座早見を1,000円〜数千円で販売しています。市内に2店舗ある──「それしか残っていない」と言うべきか──書店の一つでも見つけました。市販品はたいてい最上部の部品がプラスチック製で、回転部の中心にピンが打たれています。
だから回転部の動きもスムースで、長持ち。センセイも手を伸ばしかけたのですが、う〜ん、これだったら自作しようか。センセイは年金生活者だし。“Expert Astronomer”を使えば完全オリジナルも可能ですが、星座早見の設計図は多数公開されています。
今回はアストロアーツ社が公開しているものをダウンロード。
1枚目の写真はそれをかなり厚いマット紙(128g/m2)に出力したところ。それらを、写真上部にある厚紙(宛名用タックシートに同封されていた板紙)に全面糊付けし、重し(3枚目の写真)を置いて数日放置。((c)アストロアーツ)
完全に乾燥させます。ここからが今日の作業。部品は左から最上部の「窓」、そして回転させる星座(中央部)と周囲の固定式「枠」(2枚目右下参照)、そして裏返して使う基部。いずれも丁寧に裁断、切り抜きます。
強度やスムースな動作と直結するので、かなり気を使う作業。2枚目の写真は文字通り基盤をベースに、周囲の「枠」を糊付けしたところ。後述するように回転部(青い部分)と最上部(右上)はまだ糊付けせずに残しています。
「公開されているものだからそのまま製作すれば...」とお感じになるかも。でも指示通りに製作すると、たぶん上手く動かない。ただし決して欠陥品だというわけではないので、誤解なきよう。回転部とその周囲の「枠」が典型ですが、各部品は切り離すだけ。
つまりその間に余裕がないため、そのままでは裁断の際に発生した細かい凸凹で上手く動かないはず。
また最上部の「窓」と基部が挟んでいるのは回転部と同じ厚さの「枠」だけ。厚さの面でも「遊び」が少ないので摩擦が多く、上手く動かないと思う。
そこで今回は、1枚目の写真には入っていない4枚目の厚紙を用意。それを含めて「枠」の接合部分を撮影したのが2枚目の写真。基部+2枚の「柱」計3枚──レーザー出力を入れれば6枚──から構成されていることがわかります。(拡大写真(別ウィンドウ、1280×960))
すぐに糊付け...といきたいところですが、今日はここまで。糊付けを安定させるため、各部品の上に再び重しを置いて明日以降まで待ちます。なぜなら、まず回転部との「柱」の間の摺り合わせを調整する必要が。
丁寧に加工したつもりですが、すべて手作業なので部品それぞれに凹凸が残っています。しかも別々な部品を組みあわせているので、貼り合わせ部分の凸凹が大きくなるにもかかわらず、全体として「遊び」が少ない。他方、「遊び」が大きすぎると精度が落ちる。
でも、まぁ、これらを調整した上で、明日以降に全体を糊付けすれば、実用に耐えるかな。なお写真では最外周部の凸凹が目立ちますが、これは部品内側の位置を調整したことによるもの。最終的には全体を調理用の大きな鋏で裁断しますから、外周の凸凹は目立たなくなるはずです。
授業ではアナログな星座早見を使った上で、シミュレーションソフトへ。お伝えしたように“SheepShaver”は絶好調。手入れしたこれらの教材を実際の講義で使う日が楽しみです。
ところで、星座早見というアナログながらも近代的な教材をご紹介したのには、もう一つの理由があって...。(連続するかどうかはわかりませんが、続く)